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第66話 噂話

「何だったんだ? あれ?」 「ちょっと今のはあからさまだったよな?」 「あれ誰?」 「確か1-4の櫛田じゃなかったか?」 「櫛田君は生徒会長押しだよ」 「あ~ 前に迫ってるの見た事あるわ」 「あいつ、いつも家の格を鼻にかけてるんだよな」 「でもでも、赤城君の会長との手繋ぎみた~?」 「二人って一体どういう関係?」 「赤城君の借りものって何だったの~」 「二人ってそう言う関係?」 「あの噂はやっぱり……?」 「じゃあ、櫛田君は~?」 1年生の間でヒソヒソと噂話が始まり、 次第にそれは広がりをみせつつあった。 「よ~ 要! お疲れ~」 「赤城君、生徒会長と一緒に走ったなんて ステキ~! 借りものは何て書いてあったの?」 青木君と奥野さんがヒソヒソ噂話を打ち消すように、 大きな掛け声で僕の所までやって来た。 その瞬間、皆がシーンと静まり返って、 僕の反応を伺っているのが分かる。 「あ…… 僕の借りものは生徒会長で……」 「あ~ な~んだ 生徒会長か! 好きな人だったら面白かったのに! でも、佐々木先輩って優しいよね~ 只の一1年生にも手を引いてくれる 男気が合って! 私こそ、そのカード引きたかったわ~ 先輩と手を取り合ってゴールだなんて 女の子の憧れよね~」 「確かにうちのキャプテンだし、 責任感は強いよな。 それに周りが良く見えてるから お前の100M 走覚えてて ゆっくりと手を引いて 走ってくれたんだろうな! ガハハ」 青木君と奥野さんが僕を守ってくれるように 助言をしてくれたので、 次第に噂は下火になって行った。 「じゃあ、行こっか?」 奥野さんがそう声を掛けたので、 僕と青木君と奥野さんは 応援席に戻り始めた。 「あ、僕、ちょっとお手洗いに 寄ってきますので、先に戻っていて下さい!」 「オッケ~ 暫く私達は出番が無いからゆっくりね!」 そう言って、僕は、青木君と奥野さんから離れて、 新校舎一階にあるお手洗いへと歩いて行った。 靴箱まできて靴を脱ぐと、 誰かの話声が聞こえてきた。 僕がそっと靴箱の陰から覗くと、 校舎の入り口で話をしていたのは、 佐々木先輩と、長瀬先輩だった。 話の内容は良く聞こえなかったけど、 所々で、 「赤城要」 とか、 「Ωが……」 とか、 「婚約」 とか聞こえてきた。 僕はここに居ちゃいけないと思い、 今脱いだばかりの靴をもう一度履いて、 そっと靴箱から離れた。 そして一目散に応援席に駆けて行った。 校舎を離れたところで、 後ろから僕の腕を掴んだ人が居た。 佐々木先輩?  走を持って後ろを振り返ると、 僕の腕を掴んでいたのは矢野先輩だった。 「どうしたの? そんな息せき切って。 さっきの競争は見ものだったね? 一体借りものは何だったの?」 先輩が少し怒ったような顔をして尋ねてきた。 僕は少しビクッとして、 「あの……借りものは 生徒会長ってあって……」 そう言った途端、 矢野先輩は一息ついて、 「な~んだ、 そうだったのか~ 生徒会長か~」 と穏やかな顔つきになった。

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