74 / 201

第74話 運動部リレー2

運動部のリレーは確かに面白かった。 ボールを抱えた部は うまくバトンタッチが出来ずに、 転がって行ったボールを 追いかけて転んだりとか、 長い竹刀は便利だと思ったけど、 片手で精一杯の長さを保ち バトンタッチするのはやりにくそうで、 何度か他の走者を突いたりとか、 防具にひかかってしまったりとか、 やっぱり一番便利だったのは、 普通に使えるバトンの陸上部だった。 佐々木先輩がラインに立った時、 周りの女生徒から、 「佐々木先輩 頑張ってくださ~い!」 と、声援が送られた。 声援に紛れて、佐々木先輩が 女の子の群れに向かって 柄にも無く手を振っていたので、 僕と奥野さんは共に顔を見合わせて、 「矢野先輩みたい やっぱり幼馴染なのね~」 と笑っていた。 周りでは、 「きゃ~ ♡」 と黄色い歓声が上がっていたけど、 僕達の後ろから、 「え? 何、何? 僕が何なの?」 と僕と奥野さんの間を割って 入って来た人が居たので、 僕と奥野さんは 「ギャッ!」 っとびっくりして飛びのいてしまった。 それは紛れもなく矢野先輩で、 僕と奥野さんは、 「矢野先輩!」 と怒り心頭していたけど、 これまた周りからは、 「きゃ~ 矢野先パ~イ♡」 と黄色い声が轟いていた。 僕と奥野さんは、 「もう、びっくりさせないでくださいよ!」 と文句を言ったりしてはいたけど、 僕は正直、 矢野先輩は、佐々木先輩の口の動きを 読んだのだろうか? と、そっちの方がドキドキだった。 「裕也もやるね~ ピュ~」 のセリフに、 僕はやっぱりか…… と思うしかなった。 でも、先輩の態度からは、 僕が思ったような心配事は 全然感じ取る事が出来なかった。 それで僕はやっぱり、 さっきの事は 気のせいだと思う事にした。 「ほらほら、バトンが裕也に渡るよ。 応援しないの?」 の先輩の声に、 僕はハッとしてグラウンドの方を向き直した。 先輩にバトンを渡した 女子バレー部の先輩は緊張していたのか、 肝心の所でモタモタとしていた。 なんだか真っ赤な顔をさせて、 先輩にボールを渡すときに少し手が振れたのか、 キャッ! としたような、 ビクッとしたような態度をして、 ボールを落としてしまった。 「フフン、彼女、裕也の事、 凄い意識してるよね」 と、矢野先輩も後ろから 僕達に耳打ちして来た。 そう言った後で、先輩が僕の耳に フウ~っと息を吹きかけてきたので、 僕は耳を抑えて、先輩から一歩引いた。 先輩チョット大胆になって来てる? 僕は真っ赤になって 涙目で先輩を キッと睨んだ。 そんな僕を見て先輩は、 アハハと笑っていた。 奥野さんは 「何、何?」 と突っ込んできたけど、僕は 「ほら!見て下さい! 佐々木先輩、巻き返してますよ!」 そう言ってグラウンドの方を指差した。 クラブ対抗リレーは、 総合タイムで割り出され、 結局運動部の優勝は陸上部で、 バレー部は2位に終わった。

ともだちにシェアしよう!