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第82話 佐々木先輩、家へ来る
「このマンションにすんでるのか?」
「あ……はい、
割と公園から近いでしょう?」
「そうだな、割と便利な所だな。
それに外国人、多いんだな」
先輩はキョロキョロと
周りを見回した後でそう言った。
「このマンションは
西洋の間取りで作られてるみたいです。
海外からのビジネスマンの家族が多いんですよ
家は母が海外住まいが長かったから、
西洋仕様の間取りが好きみたいで
ここにしたそうです。
セキュリティーも良かったみたいだし……」
「なるほどな」
そう言って佐々木先輩は
マジマジと周りを見渡した。
「この辺は余り来ること無かったから
こんな感じになってたんだな。
浩二の所も引っ越して以来、
殆ど行って無いよな。
結構のどかでいい処だな」
「そうですね、緑多いし、
公園も近いし……
あっ、こっちです先輩。
ここのエレベーターを使って一気に上に上がります」
先輩はエレベーターの仕組みを見て、
「ほんとにセキュリティがしっかりしてるんだな」
と感心した様に言って、
「こんなとこに住めるって、
お前の父親、何の仕事をしてるんだ?」
と尋ねてきた。
僕はちょっと頭を掻いて、
「え~っと」
と言ったら矢野先輩が、
「着けばわかるよ」
と返したので、
あ~ 正体をバラすつもりなんだな
と言う事が分かった。
佐々木先輩は不貞腐れたように、
「なんだ、お前知ってるのか?」
と聞くと、矢野先輩は、
「そりゃ、こんなに何度も来ればね」
と返事していた。
一方佐々木先輩はというと、
一人でブツブツと、
「あの身なりから言うと……
マジシャン? いや、科学者か?
いや、編集とか?
物書きか?」
等と言っている。
それを聞いた矢野先輩は、
「クックック、分ればビクッリするよ」
と笑っている。
「なんだよ、教えろよ!」
と先輩も負けずに押している。
そうしているうちに、
僕の家がある階に着き、
僕達はドアを開けて、
「ただいま~」
と入って行った。
両親が入り口に立っているところを見て、
佐々木先輩は緊張した様に
深々とお辞儀をして、
「お昼はありがとうございました。
今夜もお招きありがとうございます」
と挨拶をして頭を上げた。
そして両親の顔をまじまじと見て
僕にこっそりと耳打ちして来た。
「おい、お前、部屋間違ってるぞ」
先輩のそのセリフに、
僕は思わず噴き出した。
先輩は?????と言う様な顔をしていたけど、
「先輩、紹介しますね。
僕の母で赤城優と、
父で、赤城司です。」
先輩はマジマジと両親の顔を見て、
「昼間とは違うんだけど……」
と、まだボケた事を言っている。
隣でそれを聞いていた矢野先輩は、
必死に笑いを我慢している風だった。
「ようこそ~
お寿司届いてるよ!
早く食べよう!
さ、さ、入って、入って」
お母さんがそう言って、
皆を案内した。
お父さんは後ろから、
「あ~ オホン!
いや、君と要君とは……」
と、何やら僕らの関係が気になるようだ。
矢野先輩から、
少なからずと僕達の関係は聞いているはずなのに、
余りピンと来なかったようだ。
先輩は立ち止まってお父さんの方を見て、
「改めて自己紹介します。
佐々木裕也と申します。
要君とは、少し前から
お付き合いさせて頂いてます!」
と深々とお辞儀をして自己紹介した。
「ハ・ハ・ハ……
お付き合い……ね……」
何故かお父さんは
少しショックを受けているようだった。
恐らく、お父さんとしては、
矢野先輩と僕をくっつけたかったみたいだ。
そして、矢野先輩の横に行き、
何やらボソボソと耳打ちしていた。
「はい、じゃあ皆座って~」
のお母さんの声に、
僕達はダイニングへ急いだ。
ダイニングに来ると、
僕は佐々木先輩の隣に座り、
その向かいに矢野先輩が座った。
そして上座にお父さんが座って、
お母さんがその向かいに座った。
「じゃあ、体育祭お疲れ様~
と言う事で、カンパ~イ!」
の音頭と共に、僕達はジュースで完敗した。
そして先輩が一言。
「お父さんって、
蘇我総司にそっくりですね。
似てるって言われませんか?」
に、僕達一同はお互いに顔を見合わせて、
更に大爆笑していた。
そんな僕達の大爆笑に、
佐々木先輩だけが更に、
?????と言う様な顔をしていた。
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