83 / 201
第83話 佐々木先輩と両親
「あの先輩、
分かっているとは思うのですが、
お昼の両親って変装なんですよ?」
先輩は僕達を見回して、
「??? 何故変装をする必要が……」
と言いかけて、手をポ~ンと叩いて、
「そうか!」
と分かった様に、自信満々で言ったので、
僕はやっと分かったか~
と思っていたら、
「蘇我総司に似てるから、
大変な目に合うんですね!
そうですよね~
スーパースターですもんね~
僕も凄い憧れてるんですが、
何時も、似てますね?
何ていわれたら、鬱陶しいですよね。
お昼のような格好だったら、
間違われることもありませんもんね!」
と、まだわかってないようだったので、
僕はガクッときた。
先輩って意外と鈍感……?
何故、僕の父親が
蘇我総司だと言う考えには
たどり着けないんだろう?
彼が僕の父親って、
そんなに変かな?
そう思っていると、
急に、
「あ~~~~っっっ!」
と大声を出して
びっくりしているようだったので、
やっと気付いたかと思ったら、
「お母さん、良く見ると、
浩二のマドンナでは無いですか?
バイオリニストの如月優さん!」
と、期待を裏切った答えを出してくれる。
確かにそちらは正解なのだが、
まさかここで、お母さんに
目が移るとは思っていなかった。
「そうだよな?
な? 浩二?
お前の部屋にあった、あのいくつもの
ポスターそのままだよな?
お前、俺に鬱陶しいくらい……アテッ!」
どうやら矢野先輩が
佐々木先輩の足を蹴ったようだ。
僕はそれがなんだか想像出来て、
プッと鼻で笑ってしまった。
矢野先輩は僕をチラッと見た後、
少し恥ずかしそうにして、
次に佐々木先輩を見て、
余計な事は話すな!
とでもいうように、
キッとにらんだ。
お母さんはそんな僕達を見ながら、
ハハハと笑って、
「そうだよ。
旧姓、如月優です。
そして、バイオリニストで、
矢野君のマドンナの本名、赤城優です。
そして、正真正銘、
要は僕が産んだ息子で~す」
と自己紹介すると、
先輩は興奮した様に、
「じゃあ、要の母親って……
男性のΩ?って事だよな。
そうか……
本当にΩって男性でも
子供が産めるんですね。
僕の周りはαばかりで、
今まで子供を産んだ男性のΩに
会ったことが無かったから、
あまり実感は無かったけど、
男性のΩの出産って奇跡ですね……
感動です。
そう言えば、お母さんって、良く見ると
要に雰囲気とか似てますよね。
色素の薄さとか、
中性的な見かけとか……
儚げそうでいて、
芯が強そうなところとか……」
と嬉しそうに聞いてきた。
「まあ、そう言う事になるんだけどね。
うん、まあ、要は僕にそっくりなんだけどね……
こんなに僕が出産して感動されたのって、
僕と司君の家族以外に君が初めてだよ」
とお母さんは嬉しそうに、
少し照れたようにして言った。
そして続けて、
「そして司君はね、
実は……
蘇我総司のそっくりさんじゃなくて……
本物の蘇我総司だよ
ごめんね、理想を崩しちゃったかもだけど……」
のセリフに、先輩はお父さんの方をブンっと振り向いて、
「要の父親って……
父親って……」
と思考回路が途切れたようだった。
それで僕が、
「そうで~す。
変装癖のある、あの変なおじさんで~す
何を隠そう、僕の父親で、
嘘いみたいだけど、本物の蘇我総司です~
先輩、お昼の変態行為は
もっと怒っていいんですよ!」
嫌味の様に言うと、
先輩は目から鱗が落ちたように、
「あ~、 だから変装しなくてはいけなかったのか。
お二人がご結婚されてる事や、
子供がいる事は、
世間には公表されてませんよね?」
と、やっと納得していた。
矢野先輩も、
やれやれ、やっとか……
とでも言う様な顔をして、
「ま、そう言う事さ、
誰にも言うんじゃないよ」
と佐々木先輩にくぎを刺した。
佐々木先輩も、
「いや、そこは勿論なんだが、
おまえな~ こんな大事な事……
だからお前、行けば分かるって、
もっと早く教えてくれてたら、
恥かかずに済んだのに!」
と、ブツブツと言いながら、
二人の顔をマジマジと交互に見た後、
「これが要の両親……
これが……」
と、放心したように言った。
「ハハハ、先輩、びっくりしたでしょう?
実はですね、今だからバラしますけど、
矢野先輩も、初めて知った時は、
ちびるかってくらいびっくりしてましたよ!
ほんとう、素っ頓狂な雄たけびあげてましたよね?」
と笑うと、矢野先輩が今度は僕の足を蹴った。
佐々木先輩は今度は
僕の顔をまじまじと見て、
「いや、要の両親って
実を言うと凄いんだな。
いや、びっくりしたよ。
今日初めて会った時は
奇麗なお母さんに
変わった……お父さん?
と思っていたけど……
本当は……
スーパーカッコイイ父親に
スーパーカッコ奇麗な母親?
要って最強DNAだな。
本当に要自身も凄く奇麗で……」
そう先輩が言うと、
それにお父さんが、フフンとしたように反応して、
「でしょう? でしょう?
要君は僕と優君の最高傑作だから!」
と恥ずかし気も無く言うと、
先輩もそれに続いて、
「はい! 僕もそう思います!」
と自信満々で返事していた。
僕はその二人の姿に
少し気恥しい気持ちがした。
でも、同時に愛されてるんだな~
と、嬉しい気持ちもした。
「ほら、ほら、要自慢は良いから
早くお寿司食べないと、
僕と矢野くんで食べてしまうよ!」
そのお母さんの言葉に、
僕達はお寿司を食べる事に専念することにした。
ともだちにシェアしよう!