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第30話(しずく)

「強がって辛さ盛っちゃったからちょう辛い。食えねえかも」 と、祈織さんはカレーのスプーンが進まないまま 俺の前に座っていた 1/3くらい頑張って食べたところでギブアップしたらしい 『交換する?おれのハンバーグと』 「うん」 と、食べかけのものをトレードした いや、おれ辛いの食えるけどさ 祈織さん、半分くらいは外食してんだから 辛さ弁えなよ…まぁいいけど 『祈織さんって、昔探偵やってたんだっけ』 「なに急に。まぁ探偵って言っても見習いぐらいだからなんも出来ねえけど」 『ふうん。なんで、やろうと思ったの』 「べつに、ただ単に住む場所と仕事両方が都合良かったから」 『どんな人と住んでたの?やっぱり髭のおじさんと女子高生と子供?』 「んなわけねえだろ。普通の老夫婦だよ」 『ふうん、それでご飯とか作ってくれてたんだ』 「うん」 『祈織さんってもしかして…』 熟女好きなのかな 母性にクラっと来ちゃう的な 「なに?」 『いや、なんでもない』 「ふーん、ハンバーグうま」 『よかったね』 おれはカレー、結構辛いよ 『祈織さんって親いるの?』 「なに急に。普通にいるけど」 『え、逆に意外』 「失礼なやつ」 『なんで、親いるのに住む所がある仕事ばっかりしてんの』 「おれ長男なんだけどさー、家継げとか特にないんだけど」 『ええ、超意外』 長男な辺りが 「なんか失礼なやつだな、お前」 いや、てっきり末っ子か一人っ子かと 「姉二人いて、ちょうからかわれるからさっさと家出たかったんだよね」 あ、それってもしかして 『弟とか妹は?』 「いないけど」 末っ子じゃん!俺の予想当たってんじゃん! 末っ子長男じゃん 「お前は?なんで行き倒れんの?普通行き倒れなくね?親いたら」 『あー、おれは母親しかいなくて。まぁべつに仲悪い訳じゃないんだけど心配かけたくないって思ってたらあんな事態に』 「ふーん、帰ってんの、実家」 『いや、それは滅多に』 「おれも。全然帰ってねえや」 と、ハンバーグは食べ終わり 横のコーンをプチプチとフォークにさす祈織さん なんか、祈織さんとこういう話したの初めてだな もう数ヶ月一緒にいるのに でも、なんかこういう話できるのっていいな 嬉しいな 「何にやけてんの?カレーうまい?」 『うまい』 「辛いのすきなんだね、しずくって」 『うん…祈織さん』 「なに、」 『俺のこと、名前で呼んで』 「え?」 『つむぎって』 「あー、」 『今もたまに呼んでくれるけど…おれ、祈織さんにつむぎって呼んでもらうのうれしいし』 「いいよ、気づいたら呼んであげる。つむぎ」 と、祈織さんが呼んでくれて なんだか自分から言ったくせに照れくさくなってしまう 祈織さんとこういう話をしてわかった おれはもっと祈織さんの事知りたいし おれの事も知って欲しい あと、 おれ、祈織さん落とす為に母性磨けばいいのかな? ご飯を終えると 祈織さんと並んで歩いていて帰り 近くのコンビニによる 『祈織さん、お酒飲みたいんだけど買っていていい?』 と、祈織さんに伝えて 祈織さんにコンビニの前でまっててもらって 祈織さんのすきなお酒がわからなかったから ビールハイボールチューハイレモンサワー カクテル梅酒と様々なお酒を買って 年齢確認もされてコンビニの前で待つ祈織さんの元へ向かう 「買いすぎ」 『祈織さんお酒何好き?』 「えええ、シャンディガフとか」 『ビールとジンジャエール買ったよ!』 半分もつ、と祈織さんは持ってくれた めちゃくちゃ優しい。 「お前酒飲むんだな」 『うん、たまに。祈織さんも今日は一緒に飲も。あれ、好きじゃないっけ』 「いや、嫌いじゃないんだけど」 『いや?』 「嫌じゃねえんだけど…」 『え?なに、』 「おれ飲みすぎるとおねしょしちゃうんだよなあ」 『おお、それは飲もう』 「なんでお前はおれに漏らさせたがるの?変態やろうだな」 いや、こういう仕事してるのにその言い方はいかがなもんかと思うけど… 祈織さんって意外に口が悪いって事も最近しった 酔っ払って寝ながらおしっこしちゃう祈織さん 最高にどえろなんだろうな めちゃくちゃ見たい 『いいじゃん。おれ引かないし』 「いや、普通にショックなんだけど。つかお前も気をつけた方がいいよ」 『え?』 「今は滅多にねえけど、おれ漏らしてた頃はすげえ弱かったんだよね」 『お酒?』 「んー、というか、膀胱?」 『なんで?』 「いや、今はもうトレーニングしたから大丈夫だけど。ストッパーがバカになるから結構昔多かった」 『そうなの?』 「なんか、そもそも結構漏らせない人多いらしいよ。ストッパーが働いて、トイレ以外だと絶対出せない的な」 『まじで、おれ昔から我慢限界超えると普通に出ちゃうじゃん』 「いや、知らねえけど。おれもだけど」 『えええ、祈織さんまじえろす』 「うわ、」 というか、それ あんまり仕事続けない方がいいのかな いや、そもそも今は大学生だからバイトでやってる程度だし 大学卒業したら、この仕事辞めるし あれ、 この仕事やめたら おれ、祈織さんのお家出てかなきゃ行けないのかな? というか、 前に決めた目標金額も 達成まであと半分くらいだった 祈織さんのおうち出ていって 仕事やめたら もう祈織さんと会えないのかな?

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