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90 支配される
久し振りに感じる人の温もり。体の奥から溶かされていくような熱い滾りに懐かしさが蘇る。優吾さんとは違うのだとわかっていても、喜び体を開いてしまう。最初こそ引きずってはいたものの、もうなんとも思っていなかったはずなのに、やっぱり自分を激しく抱くアキラに優吾さんを重ねてしまっていた。
……似てるんだ。
乱暴に感じる激しい律動。快感と同時に与えられる痛み。それら全てが「支配されている」という安心感に繋がっていく。優吾さんが俺を抱く時に与えてくれていたことを、このアキラも同じようにして与えてくれる。
「もっと……ああ、もっと……酷くして……ああっ! アキ……ラさん、んんっ……気持ちいい……」
アキラの汗が俺の頬に落ちる。荒々しい息遣いに俺は堪らなくなり、自ら腰を突き動かし更なる快感を強請った。
「ああっ……だめ、イきそう……」
「いいよ……イけ!」
俺は激しく突かれながら、夢中で自分のペニスを扱く。熱い熱がどんどん中心に集まってくるのがわかる。全身を覆うようなどうしようもない快感にだらしなく声を漏らす。気持ちが良すぎてトンでしまいそうになっていると、煩かったのかアキラに口を手で塞がれてしまった。
苦しい……息ができない。
でもなんだろう? 頭の中がふわっとしてきて気持ちがいい……
気がついたら俺はアキラの腕に抱かれて目を覚ました。
「あ……れ? アキラさん? 俺……」
顔を上げると呆れ顔のアキラが小さく笑った。
「君はセックスの時はいつもああなの? ……俺は嫌いじゃないからいいけどさ」
アキラが言っている意味がよくわからなかった。いつもも何も、俺はおかしなことをしていたのだろうか?
「俺……何か変だった?」
心配になり、少しアキラから体を離す。何か知らず知らずに不快な思いをさせてしまったのかと思い不安になった。
聞くと俺は行為の最中、しきりに「もっと酷くして」だの「乱暴にして」だの言うくせに、いざそうしてみれば「痛い」とか「嫌だ」とかうるさく喚いていたらしい。
「………… 」
確かに痛くて辛いのは嫌だ……
でも酷く扱われた方が、愛されてるという実感が強く湧くのも事実。
「ごめんなさい……俺、酷くされるの嫌なんだけど……そうしてもらった方が嬉しいんだ」
自分でも何を言ってるのかよくわからない。そういうものじゃないのか? 少なくとも目の前で困惑しているアキラを見れば、普通じゃないのだと思うのだけど、俺はこういうセックスしかわからないから謝ることしかできなかった。
「いいんだ。ごめんな……君が凄く気持ちよさそうにしてくれてたから俺は満足したよ。あんなに激しく乱れてもらったら俺も嬉しいし……」
そう言ってアキラは優しくキスをしてくれた。
俺を腕に抱き、何度も愛おしそうにキスをしてくれる。またセックスをするでもないのに、柔らかく体を弄ってきて抱き心地を確かめるように俺のことを抱きしめる。そんなアキラに心も体も満たしてもらえて、俺は嬉しくて泣いてしまった。
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