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第1話 罪と罰
例えば、目の前に蹲って泣いている子供がいたとして、どうして天使がその子を放っておけるだろうか。
悪魔が、泣いている。とても悲しい表情をして、僕を犯す。嗚呼、泣かないで、 。
「…随分と懐かしい夢を見たな。あれはもう、どれくらい前の事だったっけ。元気にしてるといいんだけど。」
自分でそう言って、思わず笑みがこぼれる。懐かしい、愛しい悪魔を思って、幸せになるのだ。もう触れることも、その姿を臨むことすら叶わないであろう悪魔を。
「レイ、黙れ。」
ぐしゅっ。
「 っ。」
まだ夢見心地だった頭を、太ももの鈍い痛みが覚醒させる。肉の裂ける音が、無機質に牢の中で響く。
「ごめんね、ルーシュ。でも、すごく懐かしい夢を見たんだ。」
痛みに顔が少し歪むが、あくまでも笑顔でルーシュに話しかける。
ぐしゅっ。
「 っ。」
ルーシュはそんなことに興味はなく、躊躇なく僕を刺す。今度は手首だ。
「どうせ、お前が助けた悪魔の夢だろう?」
ルーシュは、冷たいく鋭い目で僕を見据える。そんなに憎いのだろうか。一応同期なのに。
「そ、うだよ。僕が育てたあの子の夢だ。確か今は魔王の側近…後継者だっけ?無事居場所を見つけてくれたようで何よりだよ。何せあの子は孤独だったからね。」
サクッ。
「 っ。」
つ――と、首筋から赤い血が垂れる。ルーシュが僕を見つめる瞳が揺らぐことはなく、寧ろよりいっそう冷たい。
「お前にはもう少し、躾が必要なようだ。」
そう言ってルーシュは僕から少し距離を取ると、パチン、と指を鳴らし、魔物を喚び出す。それは、獰猛で、肉に、血に飢えていて、本能のままに動く、恐ろしいもの。
「喰らえ。お前たちの大好きな天使の肉だ。」
ルーシュが魔物たちに指示をし、僕を喰わせる。
ぐちゃり。ぐちゃり。皮膚が裂け、神経が千切れる。
これは、永遠、永劫と続く罰。魔法陣で、鎖で繋がれ、痛みを受ける。
「いいかレイ。これは罰だ。」
ルーシュは、それをまるで戒めのように僕へ言い聞かせる。そんな事、言われなくとも分かっているというのに。
そうだ。これは罰だ。悪魔と関わった僕への。
「ロウ、元気にしてるかなあ。」
僕は小さく呟き、そこから意識を手放した。
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