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第27話 関係 sideロウ

「……!」 仕事をひとしきり終えて部屋に戻ると、レイが俺の服を抱きしめて眠っていた。 (羽根がある…)  油断しきっているのか、安心しきっているのか。天使だというもののレイの背中に見たことのない純白の翼があった。 「綺麗だな…」  美しさを具現化したような存在。透き通るような白髪とも相まって、幻想的になっている。そこだけが異空間かのように。 「レイは天使の中でもかなり上の存在だったんだね。羽根がここまで綺麗な子、なかなかいないよ。」 「!」  いつからいたのか、背後に魔王の気配が在った。 「やっほ、ロウ。遊びに来たんだけど、面白い事になってるね。魔界でこんなに無防備になるなんて…襲ってくれと言わんばかりだ。」  くすくすと笑いながら魔王がそう言う。 「…何の用だ。」  レイと再会した時はレイの魂を抉っていたり、やたらと絡んできたり、一体何のつもりなのか。そもそも、俺は天界の門を開いてもらったら後は自分でやるつもりだったのに、何の気紛れなのかこいつはレイを天界から拐ってきた。糧にするために拐ったのだとしたら契約違反になるからそれはないだろうが。 「いやぁ、レイからの天界の気配が強くなっていたから気になっちゃって。羽根が出ちゃってたんだね。」  無遠慮に羽根を撫でようとする魔王の手を払いのける。 「厳しいな~」  そんな俺の行動に、魔王が更に笑いだす。 「君たちの関係は歪だね。親子に一番近いはずなのに、行動は恋人のそれに近い。でも恋人ではないだろう?そんな言葉にあてがえる執着ではない。」 (何を言い出すのかと思えば...)  俺とレイの関係に名前を付けないままでいるのは、その必要性を感じていないからだ。音で縛る必要性を感じていないから。 「じゃあ君たちは一体何なのだろうね?ねえロウ、あえて名前を付けないのはいいけど、そういう関係はほどかれやすいよ。掻いて解かれてしまう。」  運命神もいることだしね、と魔王は付け足す。 「永遠に解くことのできない強い、強い縁で縛った方がいいよ。」  瞬間、魔王手が俺の首へとかかる。 「でないと、簡単に壊されてしまうから。」 「 っ。」  爪先が首に食い込んで血が溢れる。 「神や天使といった存在はは悪魔よりずっと残酷で残虐だから。」  ギリギリと手が首に沈んでいく。気道と血管が締め上げられ、骨の軋む音がする。 「縛、る...」  縛るということへの必要性を感じたことはない。が、もし、もしまた連れていかれてしまうとするのなら、また、置いていかれるというのなら、 「...うん、そうだよ。その表情(カオ)」だ。悪魔的な本性のカオ。欲望と罪を抱える僕達の根底。もっと執着しなよ。"レイ"という存在に絡み憑いて、同一化してしまうほどに。」  数日後、俺は魔王の言葉を真面目に"聞いて"しまったことを、とてつもなく後悔することになる。

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