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「すいませんでした。最初に出した物 美味しくなくて。」 頭を下げると 文句を言っていた リーマン達もいやいやと首を振ってくれて。 「食い慣れてないからさ。 いちゃもんつけて悪かったよ。」って謝ってくれた。 その様子を嬉しそうに涼が眺めてて ああ。ホントにこの人いいなって思っちゃって。 どうせわからないだろ。なんてのはただの手抜き。 わかって貰えるようにするにはどうしたらいいか。 自分の手持ちの料理で 客が望む物を出すには どうするべきか。手持ちが少ないなら どうやって増やしていくか。 それを考えるべきだったのに。 「あの。また試食お願いしてもいいですか? 夕飯代わりに。勿論お金はいらないんで 寄ってもらえると嬉しいんですけど。」 岸さんがトイレに立った隙に涼にそうお願いしたら え。。って最初戸惑って。 でも。あまりに俺が真剣だったからか コクンと頷いて 「タダ飯は助かるなぁ。」 って了承してくれた。 それから試作品を作っては 食べて貰って 感想を貰う。 それがまた的確でね。 絶対に全否定はしない癖に 気になった事は 素人が口出して申し訳ないけどって弁解しながら これはちょっとって教えてくれる。 付き合ってから知ったけど 涼は食品メーカーの 営業で 普段から飲食店の相談によく乗っていて。 それを仕事にしてる人に 金も払わず 商品も買わずだったなんて 申し訳なくて 何で言わなかったの?って聞いたら 「新の飯食うのはあくまでもプライベートだったろ。 俺。タダ飯食ってただけだし。」って笑ってた。 そんな風に言うけど。 あれからだよな。 ランチをやる事にしたのも。 メニューを見直したのも。 作る酒の種類も増やしていって 自作カクテルから ランチ用のコーヒー、紅茶まで。 そうしたら食事をメインに酒を楽しみに 来てくれる客も増えていった。 ランチにも人が沢山来てくれるようになって。 比例してやる気もどんどん更に湧いて出て。 全部 涼のおかげ。 で。次に手に入れたくなったのが 涼だったって訳。 こっちはホント時間かかったけど・・。

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