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「まあな。この店の規模に 何より一人で
回してるって所がネックなんだよな。
いい物は高いし でも 料理人としては
作るならいい物を使って もっと旨い料理を
提供したい。ジレンマだよなぁ。。」
涼はそう言いながら ビーフストロガノフを
綺麗に平らげた。
「うん。でも 涼が食べてくれたからいいよ。
美味しかった?」
「ああ。すげえ旨かった!」
ニコニコと微笑む。
良かった。
可愛い笑顔を見れた。
それだけで充分。
「さっきも言ったけど 仔牛の骨はそんなに
原価変わらないんだ。フォンドボーが違うだけでも
味はかなり変わるし ランチはそっちで・・。」
「待て待て。CEOを舐めんなよ。」
何故かニヤッと口角を上げる。
ん。
何だろう。
涼はビールをゴクゴク飲み プハーと息を吐くと
腕を組んだ。
「今日さ。千葉さんとこ行ってきたんだよ。
お前があんまり凄い肉だって言ってたからさ。
たまたま近くの店にアポがあったから
帰りに寄って挨拶してきた。」
え。
「そうなの?」
「うん。確かにすげえ旨そうな肉ばっかりだったな。
ちゃんとルート確保してんだろ。
聞いたら 俺の取引先のステーキ屋にも卸しててさ。
あそこのステーキ。すげえ旨いんだよ。
新が使いたがるの よくわかった。
ただ 原価はやっぱり気になってさ。
新が踏み切れないでいるのも感じてたし。。
取引先のステーキ屋なら 価格もそれなりだし
利益は出るよな。熟成出来るから在庫も
抱えられるし。でもこの店のランチは毎日同じって
訳にはいかないから 量で割引も見込めない。」
・・そう。
だから諦めた。
今 涼にスパンと言って貰って
これで俺もちゃんと諦められる。
そう思ったんだけど。
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