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「CEO。ステーキで出す訳じゃないですから。 これは薄切り肉を使ってます。 フォンの仔牛は今までと原価は大差無いですし 数を限定すれば採算は取れるかと。。」 涼は意味もよくわかっていないけど このCEOごっこを毎回楽しんでいて ちょっと芝居じみたやり取りをかなり 気に入っている。 こういうとこ。 ホント可愛いんだけどね。 でも。なかなか手強くて。 案の定 またふるふると被りを振る。 パチパチと電卓を叩き 「肉の原価、フォンは仔牛だけじゃないだろ。 野菜も変えてるよな? 前よりコストかかってるし 玉ねぎ炒めたりの手間考えたら サラダ、スープ付き ランチ千円じゃ回収出来ません。ほら。」 数字を見せられた。 ・・そうだけど。 「限定で出すとなると30食。50は無理だよなぁ。 で。これだけの原価率なら価格1500円は取りたい。 でも リーマンは絶対にその価格 ランチじゃ 払わないし ご近所の家族連れも子供に この金額は使わない。年寄りには味が濃厚過ぎる。 ってこんな事 俺が言わなくても 新。わかってんよな? 今回これを出したのは。。 ああ。俺に食わせたかったのか?もしかして。」 ご名答。 くすっと笑い 頷くと なんだよー。と涼は 唇を尖らせた。 そうなんだよね。 コストをかければもっと旨い物は出来る。 でも採算取れない物は出しても経営を圧迫するだけ。 それでも 作りたかったから。 旨い肉に出会って 使ってみたくて。 でも。ランチでもいいから 採算取れなくても 出したいと思うのは 料理人としてのエゴ。 涼にダメって言われれば諦められる。 涼なら 無理だって。 俺と同じ結論を出すって思ってたから。 売り物にはならなくても 涼に食べて貰えたら いいかなって。。

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