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今日はビーフストロガノフ。 基本 ランチは一人で回しやすいように ワンプレートの飯や麺類が多い。 仕込みには可能な限りだけど時間はかけられるし 提供時間は短く出来る。 それこそ最初はTEXMEXにこだわっていたけど 涼と出会ってからは 来店客の趣向に合わせた 洋食が主となっている。 自分の好みだけ押しつけても成立しないのは あの時 よく理解した。 「まあ。回転率だよなぁ。ランチは。 森保さんのとこも昼はカウンターのみだから それが全てだって言ってたよ。」 CEOになった涼は 料理の味だけじゃなく コストや売り上げまで考えてくれるようになって 仲良くしている店舗さんからも 色々 情報を仕入れてくる。 最近出会った千葉さんがやっている肉屋の 牛ヒレが素晴らしくて なんとか使いたいと 思っていて。 ビーフストロガノフは前にも出していたけど どうしてもそれまで使っていた肉に満足がいかない。 これだ!って思ったけれど でも 夜用にするには出る数が読み難いから コスト面で不安が残る。 だから 限定で数を決めて出せるランチで。と 思ったんだけど。 それも。。。 「いただきます。」 涼はスプーンを握りしめ そう言って ビーフストロガノフを掬うと パクッと口に入れ んんっ⁉︎ と唸り声を上げた。 「これ。今までのと全然違うな。 丁寧に炒めた玉ねぎの甘みと深い旨味の フォンドボー。これも中身代えただろ? サワークリームの酸味が相まって物凄く旨い。 それにとにかくこれ。この牛肉が凄い。 一番の変更点。千葉さんとこの牛ヒレ肉。か。 ああ。だとするとフォンドボーの仔牛も 千葉さんとこのだな。」 簡単にバレた。 やっぱり涼の舌は誤魔化せない。 満足してなかっただけで 今までの肉だって いい肉だったんだけどね。。 「はい。却下。千葉さんとこの肉は ランチには無理です。新。わかってんだろー。」 もぐもぐ食べ進めながら 涼はふるふる首を振る。 このCEOは仕事となると 以前より途端に 厳しくなった。 前は ダメって言わなかったんだけどな。。 まあ。でも。こうなって欲しかったから 仕方がない。 これを説得する楽しみが別に出来たしね。

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