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「CEO。参りました。」
カウンターに額をつけるぐらい頭を下げると
涼は得意げに ありもしない扇子を振る真似をし
「新くん。あんまりCEOを舐めるもんじゃないよ。
俺はやる時はやる男だよ。」
ツンと澄まして そう言うと 顔を見合わせ
ブッと吹き出し ゲラゲラと笑い合った。
「涼のCEOってそんなイメージなの?」
一頻り笑い そう聞いてみると うーん。と首を捻り
「なんかほら。デカイ木の机がドーンと置いてあって
恰幅の良いハゲたオッさんが こう扇子を
パタパターっと。。違うか。
これ。コントの社長だな。」
またゲラゲラと笑い あーあ。と言いながら
ふう。と息を吐き 背筋をピンと伸ばす。
「じゃあ。新さん。条件付きではありますが
採用という事で。」
ニカっと笑い カチンとジョッキを俺のジョッキと
合わせて グビグビと一気にビールを飲み干した。
もう。
可愛いクセに男らしいとか ズルイ。
それに。。
「涼がそこまで考えてくれてたとは思わなかった。」
自分の力を試したい。
もっと店を大きくしたい。
誰しも飲食をやっている人間はそう考える。
涼が言ったように 元々 バーがやりたかった
訳じゃないし。
俺が内心やりたいと思っている気持ちに気づき
自分が何が出来るかを 一生懸命考えてくれて
いたんだな。
本職の仕事もあるのに。
涼は 不思議そうに へ?と首を傾げ
「新が言ったんだろ。ライフプラン・・だっけ?
大事だって。確かにそうだなって思って。
だったらちゃんと考えないとさ。
それに コストとの戦いは俺の永遠の
テーマでもあるんですよ。ホントにさぁ。。
新には使いたい物好きな様に使わせてやりたいって
思うけど 中を知れば知る程 なかなか難しいのが
わかって。。あー。もうホントジレンマだよなぁ。」
そう言って クシャクシャと頭を掻き毟った。
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