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パクパク料理を食っていると店員さんが お代わりのドリンクを持ってきてくれ そのタイミングで十条は口を開いた。 「学生時代に付き合っていたのが同性だった。 会社に入る時に別れを切り出され それからは特定のいわゆる恋人は作っていない。」 ゴクッとロックを飲み 十条はそう言うと 生ハムを摘まみ ポンと口に入れる。 「だが。俺たちも もういい年だろう。 その場限りの関係ばかり続けていても 時間の無駄なような気がしてきてな。 とはいえ結婚という制度に一切興味がない。 元々男だとか女だとかはどうでもいいが ずっと一緒に居て安心出来る。 そういう意味での安定が欲しいとは思っている。」 安定。 あー。 まあ。なんとなくわかるけど。 生活の安定じゃなくて精神の安定ね。 そうですよね。 俺も新と出会って。 初めての恋人でドキドキしてきゅんきゅんして。 ってキモイな・・。 でも。まあ。ホントにそうで。 だけど今はその愛情に深みが増したっていうか。 一緒にいる幸せをひしひしと感じる今日この頃。 辛くてもしんどくても 嫌な事があっても 話をして笑って泣いて。 その延長で まあ気持ちいい事があって。 そう。 それが幸せってヤツなんですよね。 うん。 とはいえ。 「へえ。。なんかちょっと意外だな。 お前って仕事しか興味無いのかと思ってたけど。」 ガッシリとした体つきで背も高く 濃い顔の造りが男臭さムンムンとかって 意外と女子社員からも人気あるクセに 全く見向きもしないし。 開発部のエース。 技術屋特有の変人で この頭から生み出される商品が 会社に莫大な利益を与えてる。 それがねえ・・。

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