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ビールがいいと言うので ジョッキの生ビールを出し お通しのほうれん草と油揚げの煮浸しを出す。 ありがとうございます。とジョッキに口をつけた。 この人がね。。 「新さ。俺 コッチの人達 全然知らないんだけど 【帝王】って聞いた事あるか?」 涼はあの日 そう聞いてきて。 「なんかさ。十条がコッチ界隈で そう呼ばれてるらしいんだよ。異名っての? 伝説のバリタチ。みたいな。。 で。そんな奴と どうやってこれから先 一緒に居ろって言うんだって服部 ブチ切れてさ。 半泣きで店飛び出しちゃって。。」 困り果てたように眉を下げた。 【帝王】ね。。 「その人。下の名前ってヤマト?」 「え。。えっと。。ああ。そうかな。 確か 会社入ったばっかの頃の新人研修で 一人一人挨拶した時に つまらなそうに 戦艦大和の大和だって言ってたかも。。」 ああ。 じゃあそうだ。 世間は狭いな。。 特にこっちの業界は。 「ここ数年は名前聞かないけどね。 確かにそう呼ばれてる人は居たよ。 一晩でいいからって順番待ちしてるネコが ゴマンと居るとか居ないとか。 俺は直接は知らないけど 知り合いが そんな話してたのは聞いた事がある。」 げーっ。と涼は顔をしかめた。 「それが十条? 信じらんねえ。。」 まあね。 普段と夜がガラッと違う人はこの筋には多い。 「で。本人は? なんか言ってたの?」 「ああ。。なんか 服部と別れて。 だったらそういう世間体とか関係ない 一夜限りの付き合いならいいんだろうと 若いうちはかなり遊んでたって言ってた。 で。この年になって服部も結婚する気も無さそうだし だったらもう一度やり直して。って思ったみたい。 俺たちが上手くやってるのを知ったってのも 行動を加速させたみたいで。。」 全く落ち度は無いのに 責任を感じていたのか 涼は深いため息をいつまでもついていた。 その様子がちょっと可哀想でね。。 涼は優しいし。 ちょっと優しすぎるくらい。。

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