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「・・で? 払う気なんだろ?」 新だったら絶対にそうするに決まってる。 「うん。スギさんには無理だろうし ちゃんと権利を茂さん一人にしてから 改めてどうするか決めた方がいいでしょ。 訴えたり 揉めたり それこそスギさんが 逮捕されたりなんて望んでないだろうしね。 だからまずは権利だけでも取り返して おこうかと思って。 今まで散々お世話になったし それくらいはね。 弁護士の先生も引き続き手伝ってくれるって 言ってくれてるから。」 「そっか。じゃあ俺も払うよ。 嫌なら貯金箱でもいいし。こういう時の為に 使った方がいいと思うからさ。 まあ。それだけじゃ足りねえだろうし 相談しようぜ。な。」 俺だって何かしたい。 少しでもいいから何か出来たらってずっと思ってた。 結局 金払うくらいしか出来そうにないけど 貯金箱なら元々新の金だし まずはそれからなら 気持ちの負担も軽い筈。 新は 一瞬躊躇し それでも ありがと。と 頷いてくれた。 俺の気持ちが伝わったらしい。 よし。 後は茂さんだけどなぁ。。 新が何度も茂さんに連絡しているのは知ってる。 それでも戻ってくるとは言わないらしい。 この間マキさんが店に来て大きなため息を ついていた。 「いいから一回帰っておいでって 言ってるんだけどね。 お母さんの面倒見てるみたいなんだけど 家族に認めて貰ってるわけでもないし 実家には居られないって小さいアパートに 一人で住んでるみたいなの。 面倒見てるったって施設に入れてるみたいだし 実際はそんなにやる事もないんじゃないかと 思うのよね。 だけど やっぱり辛いのかなぁ・・。 戻ってくるとは絶対に言わないのよ。 そういうとこホント頑固で困っちゃう。」 マキさんは茂さんが頼んで 話をつけてくれた 他の店で今は働いてる。 でもマキさんも諦めていないらしく 手付代にと 常連さんに働きかけてカンパを募ったり 何度も向こうにも行って茂さんと話も してるみたいで。 「寂しがってる常連さん多いのよ。 ママはみんなの相談相手だったし 面倒見て貰ったって恩義を感じてる人も 多いからね。。。」 新もそうだったしな。 こっちの人はどうしても色々心に闇を抱えてる。 辛い思いしてる人も多いし 茂さんの優しさに 救われてた人はいっぱいいるだろう。 みんながカムしてる訳じゃない。 まるで悪い事してるみたいな罪悪感は ホント 嫌なもんで・・。 店を出てとぼとぼ帰っていくマキさんの 背中が本当に寂しそうに見えた。 「ホント戻ってくればいいのになぁ。茂さん。 一人が辛いのはわかるけど・・。」

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