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「・・嬉しいんだよね。」
新は歩きながらぽつっとそう口にした。
「何が?」
手を離そうか迷いながらそう返すと
俺へと目を向け くるっと手を入れ替えると
ポンと甲を叩いて手を離す。
「流石に知ってる人いるかもしれないしね。」
くすっと笑うと また前方へと目を向けた。
「こうやってお土産買うとか。初めてなんだ。
温泉行っても買ったことなかったでしょ。」
ああ。そういやそうか。
自宅用に食いもん買うくらいしかしてなかったかも。
「この人なら何がいいかなとか。
喜んでくれるかなとか 考えた事も無くて。
楽しいよね。全部 涼のおかげ。
涼が俺にいっぱい繋がりを作ってくれたから。」
そう言ってニコッと笑みを浮かべる。
まあ。
そう言って貰えると嬉しいけど。
「それは新が自分で作った繋がりだろ。
俺が全部お膳立てしたとかじゃねえし。
でも。まあ。確かに色々広がったよなぁ。。」
助けて助けられて。
ひとりぼっちだって思ってても
実際はそうじゃない。
色んな人に力を貰って前を向けてる。
これからもきっとそうなんだろうな。
「お土産喜んでもらえるといいな。
ああ。雨宮さんとこは俺も買ったから
一緒に持ってこうぜ。。って何買ったんだよ。」
ああ。と新はまたビニール袋を覗き込む。
「クッキーにしたんだ。雨宮さん 好きでしょ。
うちの近所のケーキ屋さんのクッキー
いつも買ってきてって頼まれるから。」
ほら。と見せられた箱は何人もの新喜劇のキャラが
アニメ化された包装紙。
「・・違うだろ。これ。パッケージ買いじゃ
ねーか。」
呆れたようにそう返すと 新はくっと笑い
「電車来てる。行くよ。」とまた俺の手を握り
走り出した。
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