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1.泉里SIDE

「初めまして泉里くん。この子の名前は氷雨。これから仲良くして欲しい」 幼稚園の入学式の日、父の会社の人に自己紹介をされた。 俺の家はαの家系でβやΩは殆ど産まれない。 だが、まだ幼い俺は容姿が完全に女の子だった為Ωかもしれないと家族に心配されていた。 Ωは苛められたり、見下されたりする事が多い。 時には暴力やレ〇プをされたりもする。 自分の子供がΩというだけでそんな目にあったらどうしよう。心配した父は自分の会社の部下に俺と同じ年齢の子を見付け、その子と同じ幼稚園に俺を入学させた。 そして父はもし俺がΩだったら番に、αだったら仕事仲間になって欲しい。その子にそう頼んだ。 俺の名前は天羽泉里(あもう せんり)。 裕福なαの家系で父が社長な為将来が決められているが、偉いのも金持ちなのも家族であって俺ではない。 実際俺自身は全く家族に似ていない弱々しい容姿のせいで幼稚園ではΩじゃないかって噂されている。 そのせいで常にジロジロ見られるが、話し掛けてくれる子は1人だけだった。 その子の名前は穂積氷雨(ほずみ ひさめ)。父と会社のせいで俺なんかと強制的に友達にさせられてしまった哀れな人間だ。 なのに氷雨は嫌な顔1つせず常に俺の側に居てくれる。 二人一組になる時は必ず一緒になってくれるし、ご飯も休み時間もトイレの時でさえ、全て隣に居た。 だから友達が出来なくても全く寂しくなかった。 頭が痛くて休んだ翌日、いつも通り登園したら氷雨が女の子と話をしていた。 初めて見た。 俺以外にも友達居たんだな。 チクリ胸が傷んだ。 氷雨は綺麗な顔立ちをしているし、優しいし頼りになる。 四六時中俺と一緒に居るせいで俺としか話してないが、本来なら沢山の友達に囲まれている様な存在ではないのか? 俺が氷雨を孤立させている。 俺のせいで氷雨迄寂しい想いをしているのでは? 一度そう考えたら申し訳なさで胸が苦しくなった。 いつもならスグ側に行っておはようって挨拶するのに、足が竦んで近付けない。 廊下で立ったまま動かない俺に 「邪魔」 文句を言ったのは鳳千空(おおとり ちひろ)。いつも明るく元気で行動力があるからか皆の人気者だ。 「何お前、今日はアイツの側に行かないのか?お前1人じゃ何も出来そうにないもんな。でもアイツはお前が居なくても生きていけそう」 鳳くんは他の皆にはニコニコしているのに、俺にだけ意地悪な事を言う。 俺にしか聞こえない様に言うから、誰も鳳くんの嫌な顔を知らない。 「お前が休んでた昨日、アイツいろんな奴とスッゲェ楽しそうに話したり遊んでたぞ。お前居ない方がアイツも幸せなんじゃね?」 自分でも理解している。 俺の存在が氷雨の足枷になっているって。 氷雨は律儀に命令に従って側に居てくれているだけだ。 俺は氷雨を友達と思っているが、氷雨は俺をどう思っているのだろうか。 怖くて聞けない。 「泉里」 氷雨が俺に気付いて名前を呼んでくれたが、俺は氷雨に泣き顔を見られたくなくてそのまま幼稚園を飛び出した。

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