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第121話

何にする? 麦茶。みたいな会話をして、お互い飲み物をゲットした。 外から入ってくる生ぬるい風が汗ばんだ肌に触れて、ちょっとだけ涼しく感じる。いや、暑いな。 「七織」 「なに?」 「ん」 両腕を広げたその体勢。俺は迷わずそこに滑り込んだ。 これです。求めてたのはこれ。この温度。そして質感。気持ちいい…。 「俺すごい汗かいてる」 「夏だからお互い様だな」 「嫌じゃない?」 「俺は全然。七織は?」 「全然。好き」 背中に腕を回して頬も胸元にぎゅうっと押し付けて、あっしくんを堪能する。 でもここ学校だからな。これ以上はちょっとな。 家来る?って気軽に言えない距離なのが憎い。 「そろそろあおたち戻ってくるかなぁ」 「暑いし急いで戻って来そうではあるな」 「だよね」 離れたくないなぁ…。 そんな本音がぽろっとこぼれて、我に返った俺は慌てて離れようとした。が。 「ちょ、あっしくん!」 めちゃくちゃがっしり捕まえられてる! 力で俺が敵うわけもなく。でも全然痛くはないからきっとちゃんと調節してくれてる。 「離れたくないんだろ?」 「そうなんだけどね? ここ学校なんだよね…」 「学校だな」 平然と胸元に戻される俺。いやーまぁ学校なんだよねとか言いつつ嬉しいから抗えないよね。抗う気も起きないし…。 「見られたらさぁ、やばくない?」 「2階のこんな隅、覗くやついる?」 「んん〜いる、かも?」 「向かい側校舎ないのに?」 「んむ」 肩を抱かれて柔らかい唇が触れる。発火するんじゃないかと思うくらい顔に熱が集中した俺は、唇が触れた場所を押さえて、あっしくんを見上げた。 「初めて、だったんですけど…っ」 「悪い。可愛くて」 「許すぅ…」 照れた笑顔の破壊力よ…。 っていうか、流れるようにちゅーされた。ずるくない? 「あんまりさぁ、されたら破裂するから…」 「嫌?」 「嫌なわけない。…好き」 あっしくんが甘い。視線とか声とかめちゃくちゃ甘い。 嬉しくて溶けそう。 「もう1回していいか?」 「ん」 断るという選択肢は俺の中に存在してませんでした。 1回目は不意打ちだったから、2回目の方が緊張する。もう目は閉じてていいの? 「んぅ」 変な声出た! あっしくんがひそっと笑う気配がして、離れた唇がもう一度。優しく吸われて、軽いリップ音がした。もう1回じゃなくて、もう2回じゃん。 キスが気持ちいいって、初めて知った。 ドキドキし過ぎて顔を上げられなくなった俺は、目の前の体にがっしりとしがみついたのでした。                  おしまい

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