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3/25 御堂くんはお久しぶり

(前回までのあらすじ:諸般の大人の事情により近況報告が全くできなくなり、いままでの日記を削除していた)  僕の恋人の御堂くんは高校生作家で、ミステリーを書いている。  以前は息抜きにBLを書いていたけれど、ここのところは、ミステリー作品を書くのに忙しそうだった。  昼休み、ノートを開いてぼんやりしている御堂くんに、声をかけた。 「御堂くん? 大丈夫? なんかぼーっとしてる?」 「……? ああ、君か。いや、新刊のあらすじを考えているんだが、一向にトリックが浮かばないまま締切まであと6日なんだ」 「えっ、大変」  御堂くんはほんの少し頭を上げ、虚空を見つめる。  聞けば、シリーズの続刊が出るか打ち切りになるかの瀬戸際らしく、思い浮かんでもいないトリックを前提にあらすじを作っている状態らしい。  新人作家は大変だ。  書けなければすぐに切り捨てられてしまうのだから。 「うう……」 「御堂くん!?」 「ダメだ……うぅ……」 「しっかりして! 平気だから! ぼ、僕もいるしっ!」  思わず恥ずかしいことを叫んでしまった。  勝手に慌てていると、御堂くんは物憂げな目で僕を見た。 「ダメだ、限界だ。BLが書きたい」 「……へ?」  拍子抜けする僕の様子には気づかず、御堂くんは独白を始める。 「いや、元より、ミステリーで作家デビューしたあともBLをやめるつもりなど毛頭なかったのだが、やはり僕の実力では同時進行が難しかった。あふれてしまいそうな欲求を抑え、いまは我慢のときだと自分に言い聞かせて、トリックとアリバイと犯人の異常行動を考え続ける日々。……だがもう、無理だ」  御堂くんはぱたっとノートを閉じ、ふうっと息を吐いた。 「決めた。このあらすじが終わったら、BLを書く」 「ほんと? そっか……、よかった。なんだろ、すごい、すごいうれしいな」  御堂くんが、自分の気持ちに正直にまたラブストーリーを書くのだということが、僕にはとてもうれしいことに感じた。  でも、同時進行はきつくないのだろうか? 「体力的には平気なの? いくら好きなことって言っても、勉強とかもあるわけだし――」  ……と言いかけた僕の頭に、御堂くんはもふっと手を置いた。  そして、眉根を寄せて笑う。 「なんだ。君が言ったんだろう? あんなに大きな声で、僕がいるから平気だって」 「み、御堂くんっ。そういう恥ずかしいのは忘れてよ」 「んー……?」  不可思議なものを見るかのように僕の目を覗き込んだ御堂くんは、一瞬黙ったあと、ぷっと噴き出した。  一生忘れるもんか、と言って。

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