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第3話 芽生えた想い
父親に命じられるまま男に貫かれるのを何ら厭わない男が不憫だったに違いない。
誰も抱いたことがないから、あの頃の自分はあんな歪んだ勇ましさが表われたのだろう。躯を合わせることの重みを知らなかった。
今だって、男とも女とも通じたことはない。
でも、もう簡単には躯を差し出さない。
この躯が愛しい。
自分の躯なのに、人に大切にされて価値がわかった。
あの頃は、己を捨てようとしていた。
あの日も、今も、暁宏の態度は変わらない。穏やかなまなざしには、憐れみも嘲りもない。
あの日できなかったことを夢見ていいのだろうか。あり得たであろう暁宏との夜を、朔哉は思い描く。もう躯を邪険に扱うことはないが暁宏になら……。
誰の肌も知らないから、性の対象として身近な暁宏を選んでしまったのだろうか。その頃にはなかった愛情が芽吹いてしまったか。
朔哉にはわからない。
二十一にもなるのに、人を慕う、愛する、触れ合う、全ての営みをしてこなかった。
愛だとしても、既に拒まれたのだから、交差することのない片思いだ。
当主に抱かれなかった西川家執事はどうなるか。主の性を満足させられないのなら、執事としての生を全うする。ただそれだけだ。
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