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第21話 腕のなかで

躯の仕組みを確かめるように幾度も抱き合ったあと、何も着ないで、ふたりでベッドに横になった。 息が乱れる朔哉を秀一郎が抱きしめている。 秀一郎の腕のなかにいると、自分がどんな風に抱かれたか一瞬、一瞬、浮かんでくる。 肌を滑る唇。ゆるやかだけど確実に朔哉を追い込む手の動き。 朔哉の中で押し進む昂りの逞しさ。 火照る躯を冷まそうと、大きく息を吐いた。秀一郎を見ると、音を立ててキスをしてくれた。 「朔哉くん。大丈夫?」 「はい。落ち着いてきました」 「それじゃあ、話すね。俺が暁宏と交わした約束のこと」 秀一郎は朔哉の背中を撫でた。 「朔哉くんにはもっと広い世界を見せたいって、暁宏は言っていたんだ。俺は、大学の近くで喫茶店を営んでいる。朔哉くんに俺の店で働かせようかと話していたんだ。もちろん館にいても、いろんな客人はやって来るから刺激にはなる。でも、きみと歳の近い子はいないだろ。もしきみがその気なら大学に通ってもいい。どうかな?」 どう答えようか迷っていると、頬にキスされた。 「いきなりきみを抱いて、信用ないだろうな。暁宏の前では、約束は守らないと言ったし。俺は早くきみを手に入れたくて、咄嗟に嘘をついた。昨日、庭園に立つきみを見て、こんなにも凛々しいのに誰のものにもならずに生きてきたんだと思ったら、すぐにでも自分のものにしたかった……俺は、きみの掟を利用したんだ……朔哉くん。酷だけど、きみに伝えなくてはいけないことがある」 強く抱きしめられる。秀一郎の瞳が揺れている。 「暁宏は、きみを抱くつもりはない。一生。彼は女性しか愛せない」

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