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第4話
「ルイスが元気になるように、いっぱい栄養つけてあげたいんだ」
「はぁ〜、あんたの弟は、なんだったら元気すぎるくらいだと思うけどねぇ……」
エミリーさんが何かブツブツ言いながら食材を袋に入れてくれる。
「栄養つけるっていや〜あれだろ〜」
突然、バールでお酒を飲んでいた三十代くらいの青年が声をかけてきた。
「あのエルフの森で獲れるってゆー、幻のイクキノコ!!食べた日には元気モリモリ、朝からビンビンって話だぞ〜」
「元気モリモリ!?エルフの森で獲れるんですか!?でも、あそこって入っては行けないって子供の頃から母さんに言われてるんだけど……」
「ん?んぁ〜子供はな〜見目のいい子はよくエルフに攫われるとかいうが、お前さんはもう大人だろ〜?」
「そうだったんだすね!大人になったら行っていいんだ!!ありがとうございます!!」
エルフの森はまだ小さかった頃に迷い込んで、親にこっぴどく怒られてからは、一度も足を踏み入れたことはなかった。
「ん、んぁ〜まぁ、いいってことよ…。それよりなんだ、お前さん俺の隣でちょっと呑んでかないか?なーに、悪ぃようにはしねぇよ……」
酔っ払いの青年が、僕の肩を馴れ馴れしく抱き寄せた。
「ちょっと!この子は、あのルイスのお兄さんだよっ。分かってやってんのかい!?」
「え!?マジか!?……じゃあ、この子があの……や、なんでもねぇ。忘れてくれ!俺は帰るよ!!お勘定!!……うぅ、くわばらくわばら。」
酔っ払いの青年は会計を急がせると、逃げるようにその場を後にした。
エミリーさんが気の毒そうに溜息をついている。どうしたんだろう?体調でも悪かったんだろうか。それは確かに気の毒だ。
「エミリーさん、僕、このまま早速エルフの森に行ってみようかと思うから、買ったもの預かってて貰ってもいいかな?」
「それは良いけど……本当に大丈夫なのかい?あんたくらい見目が良ければ、子供じゃなくてもエルフに拐かされるんじゃないかと心配だよ」
「エミリーさん、何言ってるの?僕、モテた事なんてないから大丈夫だよ。ルイスは綺麗だけど、僕は全然普通だから大丈夫だよ!」
「だから、それはあんたの弟が怖いから……」
エミリーさんが何か言っていたが、僕はエルフの森の事で頭がいっぱいだった。
子供の頃迷い込んでしまった時の記憶は何故かすっぽり抜け落ちてしまっているが、僕は遠くから見えるエルフの森が大好きだった。
雨上がりの日に二階の僕の部屋の窓からエルフの森の方角を見ると、必ずと言っていいほど虹がエルフの森から掛かっているのだ。
その虹はまるでエルフの森に続く階段のようで僕はいつも窓からそこまで飛び出してみたくてドキドキした。
その話を両親にすると何故か火を吹く勢いで怒られたので、この事は僕だけの秘密だった。
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