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第3話
「行ってきまーす」
「あぁ!待って兄さん!!僕も!!」
「お前は店番だよ。お前が店にいるかいないかで、売り上げが全然違うんだからっ」
「にいさぁぁぁんん!!」
買い出しに行く僕に着いてこようとしたルイスを母さんが羽交い締めにしている。
ルイスは僕の両親が営むパン屋の看板息子だ。
僕が手伝おうとするとルイスが
「絶対ダメ!!兄さんのその可愛い手で汚いおじさんに小銭を渡そうものなら、その手を思い出しながら、おっさんはその夜に…
ぁぁぁああああ!!絶対ダメだ!!兄さんは裏で父さんの手伝いをして!!」
と喚きたてるので、僕は店番を手伝った事が殆どない。
店番をしてる時のルイスはなぜか元気なので、ぼくもその方が安心だった。
(ルイスがもっと元気になるように!今日も栄養満点の食材を見つけてこなきゃ!)
買い出しと言っても、この町で食材を取り扱っているのは、宿屋だけだ。
宿屋の一階がバールになっていて、その店先が食材店になっている。
「こんにちは〜」
「おや、ラルフいらっしゃい。今日も可愛いわね」
「可愛いって、エミリーさん、僕もう20歳だよ」
「可愛いもんは、可愛いんだからいいじゃない。
可愛いは正義よ。あんたも、あの弟さえ居なければ、そろそろいい人紹介してあげんだけどね〜」
エミリーさんはこの宿屋の若女将。
旦那さんのゴードンさんが、裏で食事を作ったり食材を仕入れて来る分、表の事は全部エミリーさんが仕切っているという働き者だ。
今日もバールにいる何人かのお客さんにお酒や食事を運びつつ、食材を買いに来た僕にも話しかけてくれる。
「今日は何買いに来たんだい?」
「えーと……セールリの葉とナツの実と、後はオカーラの粉も…」
「まーた、随分身体に良さそうなもんばっかりだね……」
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