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第12話

「吉行、最近調子いいじゃん」  そう財津が声をかけるほど、悠真の演技には磨きがかかっていた。 「何か、さ。与ひょうが乗り移ったみたい」 「そうかな。財津に言われると、自信がつくなぁ」  つうを愛する与ひょうと同じように、未緒を愛する悠真だ。  演技に、ぐっと艶が増していた。 (でも、与ひょうは最後につうと死に別れるんだよな……)  未緒が死ぬ、なんて想像もしたくない。  だから、知らず知らずのうちにラストシーンの演技だけは抑えたものになっていた。 「つう……、つうッ!」 「はい、ストップ」 「やっぱり、ですか」 「そう思うってことは、自分の演技に確信が持ててない、ってことだな」 「はい……」  悠真は、うなだれた。  腕の中には、さらに減量を進めてすっかり軽くなってしまった未緒がいる。  心配そうに、こちらを見ている。 「悠真くん、大丈夫?」 「平気です。もう一回、お願いします!」  悠真は、文化祭が近づくほどに、演劇にのめり込んでいった。

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