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第13話

「俺、つうが死ぬシーン嫌いなんですよね」  土曜日恒例になった未緒宅での練習で、悠真はぽつりと口にした。 「どうして? クライマックスシーンだよ?」  主役が一番輝く場面なのに、と未緒は喉にいい蜂蜜レモンを悠真に差し出した。 「ありがとうございます」 「……どういたしまして」  未緒の返事は、少し拗ねた色を醸していた。 「ん? 俺、何か変なこと言いました?」 「いや。悠真くん、いつまでも敬語だなぁ、って」  二人きりでいる時は、タメ口でもいいって言ったのに。 「あ……」 「何?」 「今、未緒先輩のこと、すっげぇ可愛いって思いました」 「もう! バカ!」  ふざけ半分で圧し掛かってくる未緒を、悠真は笑いながら受け止めた。  抱き合って横たわり、互いの呼吸を感じていた。 (生きてるんだなぁ、俺たち)  好きな人がすぐ傍に居て、触れ合って。  その糸が突然断ち切られた時の気持ちって、どんなだろう。  与ひょうの気持ちって、どんなだろう。  大好きな未緒を腕に抱いても、悠真はまだそんなことばかり考えていた。

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