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第18話

 文化祭の打ち上げで、悠真は部員にさんざんいじられた。 「まさか、本気で泣くとは思わなかったよ」 「俺には、ああいう演技はできないなぁ」 「もう吉行は、与ひょうに名前を改めろよ」  妙な言われ方だが、褒められていることには違いない。  悠真は恥ずかしいやら嬉しいやらで、終始落ち着かなかった。 「未緒先輩は、どうでした? あの最後」 「完璧ではないかもしれないけれど、最高だったよ」  客席では、涙腺の緩い生徒がもらい泣きしていたという。  悠真の与ひょうは、確かに人の心を動かしたのだ。 「よかったね、悠真くん」 「ありがとうございます、未緒先輩」  二人でジュースのグラスを鳴らし、乾杯をした。  翌日、悠真は校内で見ず知らずの生徒からよく声を掛けられた。 「お、与ひょうだ」 「あ、与ひょうくん」  友達からも、『与ひょう』と新しいニックネームを付けられてしまった。  悠真は名実ともに、与ひょうになってしまったのだ。

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