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第8話
数年前。とある家族の話。
被害者、持田優希。
ガタガタ、、ガタン!!
「う、痛い…痛い…俺は死ぬのか、、、、?」
これは血なのだろうな。背中が、後頭部が濡れていく。ちくしょう。
意地でもこれはバレないようにしなきゃ。。
――――――――――――
高校から帰ってきた俺はいつも出迎えてくれる母親がいない事に不安を覚えた。
昨日の夜両親が喧嘩をしていた。2階の自室にいた俺は気にせずスマホでゲームをしていた。
「あなた!!浮気してるんでしょ!!知ってるんだから!」
「会社の人と飲み会しただけだよ。なんだ急に。」
「嘘!!若い女の子と腕組んでいたの見たの。駅で見たんだから。写真も撮ってあるわ!!仕事も、家事も、子育ても頑張ってるのに何でよ!バカにしないで!」
ダイニングテーブルで話をしているんだろう。ガタガタ、バン!など音が聞こえる。
「落ち着けよ。たまたま腕組まれただけですぐ離してもらった。周りは会社のヤツらだよ。そもそも家事や仕事に口出しした事ないだろ。」
「私の事好きって言ってくれたのはもう過去なの?飽きたの?今すぐにでもその女と別れて。じゃないと死んでやる!」
(今回は穏やかな内容じゃないな。母さんが死ぬとか言うの初めてじゃないか。)
喧嘩の内容を聞くのが嫌になり布団を頭から被せ無理やり目を瞑った。
気がつくと朝になっており、恐る恐る下へ行き母さんの姿を探した。
「おはよう」
「優希おはよう。昨日は眠れた?喧嘩の声うるさかったでしょ?ごめんね。」
昨日の今日で顔に疲れが溜まっている。
母さん、目の下にくまが出来てる。
「大丈夫だよ。喧嘩しない人なんていないんだから。今日仕事休みだろ?ゆっくりしてなよ。俺学校の後バイトだからご飯いらないし。」
「そっか。。今日はゆっくりしちゃおっかな。。」
「それがいいよ。なんか欲しい物あったら連絡して。いってきます!」
「行ってらっしゃい。気をつけてね。」
玄関のドアを開けて何気なく後ろ振り向いたら母さん疲れてるのに見送ってくれた。
親父は何してるんだよ!と苛立ってきた。
親父は会社員で部長だ。みんなで飲み会でもしたんだろうけど腕を組まれたとか怪しいに決まってんじゃん。
今日は少し親父と話してみるか。
そんな事考えながら、学校ダルいなぁと歩いてた。
ブルルル…ブルルル…
(ん?LINE?)
「優希ごめんね。母さん一人カラオケしてくる。少し頭冷やしてくるよ。」
「それいいね。一旦現実忘れて遊んじゃえ。」
俺は父さんと少し話さないとな。。
何か仲直りできるきっかけがあればいいな。
今日は試験前ということもあり午前中のみ授業で午後からは特にすることもない。
バイトもないので家でテスト勉強でもする為まっすぐ帰宅した。
「ただいま」
しーんと静まってる家。久しぶりにおかえりの声がないのも相まって寂しい気持ちになった。
気持ちを切り替える為に軽くシャワーを浴びて部屋に篭った。
キィー。。。パタン
コツ。。。コツ。。。
(ん?誰か家の前にいる?)
カチャ。。ガチャ。。カッ。。。チャン。。
(え?鍵開けた?でもなんでこんなにゆっくり回すの?泥棒??)
カチャ。。パタン。。
コツ。。。コツ。。。
(え?誰だろう。いや泥棒だったら危ない。軽く覗いてみるか。)
ソロ。。
俺も忍び足で部屋のドアへ向い、ドアをゆっくり開け隙間から玄関を覗いてみた。
(え?女の人?!)
明らかにロングヘアーで黒髪だった。
母さんは茶髪でショート。。
誰だろ。まさか父さんの不倫相手?まさかなぁ。タイムリー過ぎるだろ。。
「持田部長の部屋はどこかしら」
(やばい!?本当に不倫相手かも!怖いけど…スマホで録画して近づこう。証拠になる。)
「これは俺のスマホ。持田優希のスマホです。今鍵を開けて家に入ってきた黒髪ロングの女の人が居ます。階段上がって来る前に顔を収めたいと思います。」
また慎重に部屋のドアを開け2階のちょっとした廊下から1階の玄関が見える所へ移動した。
家は2階建て。玄関入って右に靴箱があり、まっすぐな廊下と2階へ行く階段、左手には畳の部屋の襖。
階段上がって左右に腰壁、吹き抜け天井になっており腰壁からスマホのカメラ部分のみだして、その画面越しに1階を見る状態でじっと待っていた。
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