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ActⅠ Scene 6 : 見慣れない客。①

「見慣れない顔だ。新しい客だね」  何やら今夜は一段と騒がしい。  控え室から顔を覗かせたティム・コナーはクリフォードがいる玄関ホールまで歩いてくるなり、ぼそりと呟いた。  ティムの言葉を合図に、クリフォードは整った眉を片方、つり上げた。  クリフォードと同じくらい高い身長にすらりとした長い足。広い肩幅。つり上がった鋭い目と薄い唇。波打つ黒髪に褐色の良い肌をしたロマの彼は、クリフォードが経営するこの賭博クラブの支配人である。  そんなティムの視線の先には、バーカウンターがある。  クリフォードも支配人のティムが寄越している視線を追った。  そこにいる二人の客を中心にしてこの賭博クラブは騒然としていた。  二人のうち一人は常連だ。大きく膨れた腹に色黒の男はいかにも紳士だといわんばかりに口髭を生やし、絹のジレとシャツに丈の長い黒のフラックコートに身を包んでいる。あの客は曲者で、容貌が美しい青年を見つけては口説くという困りものだった。  そして案の定、今夜も男は自分の眼鏡にかなった相手を見つけたのだろう。言い寄り、そしておそらくは拒絶されたらしい。顔を真っ赤にして激昂している様子だ。  もしかするとあの客は自分が金持ちなのをいいことに今夜の相手をするよう迫ったのかもしれない。  さて、あの男が目を付けるほどだ。さぞやお相手は美しい容姿をしていることだろう。  クリフォードは新規の客に目を向け、ざっと確認する。  細身の華奢な躰に澄んだ翡翠の目。なるほど、たしかに人目を惹きつける容姿だ。

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