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ActⅠ Scene 6 : 見慣れない客。②

 しかし彼には見覚えがある。  たしか一昨日前の夜に出会した探偵だ。  だが、なぜだろう。  もっと以前、ずっと過去に会った気がするのは――。  クリフォードは長すぎる過去の記憶を辿るべく、顔を(しか)めた。 「それにしても彼、なかなか美人じゃないか。おれはもちろんだけれど、あなたが好きそうなタイプでもあるだろう?」  ティムがそう口にしたのは、彼もクリフォードも性別に関係なく色目を使われることが多かったからだ。  女性にしても同性にしても、自分たちの容姿は人目を惹きつけ離さない。魅惑的な雰囲気を持っていた。  審美眼をもつティムが賞賛している。彼を合図にクリフォードは新規の客をよくよく見るため、目を凝らした。  たしかに、出逢った当初にも思ったが、無駄な筋肉ひとつないか弱そうな躰つきをした彼は頼りなげで探偵業を営んでいるとは思えないくらい、守ってやりたくなる容姿をしている。  しかし翡翠の目はそれに対して決意と信念を宿らせている。揺るぎない真っ直ぐな目が気に入った。  こうして明るい照明の中であらためて彼を見れば、ティムの言うとおり、たしかにクリフォードの好みのタイプだった。  強情そうなあの薄い唇を吸い、柔肌を蹂躙すればどれほど甘美だろう。  クリフォードの思考に気づいたのだろうティムはにやりと笑みを浮かべている。  クリフォードはひとつ咳払いすると楽しそうにこちらを見ている支配人に眉を潜めた。  ことのほか、彼は目ざとい。

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