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Act Ⅲ Scene 2 : a culprit ④

 いや、むしろ彼の青い目には人を惹きつける力がある。どこまでも澄み切った青に吸い込まれそうだと思ったことだってある。  クリフォードとゴドフリー公爵のどちらが良識がある人間かといえば、当然ゴドフリー公爵だ。  貴族たちからの人望はあるし、富も名声も手にしている。政府に雇われたハンターだということも間違いではないだろう。十人が十人ともゴドフリー公爵が正しいと答えるに違いない。  それなのに――。  彼とこうして向かい合っているただそれだけで冷たい汗が流れてくる。彼の中にある得体の知れない何かが怖いとカルヴィンの本能が告げる。  ああ、頭が痛い。  屋敷中を覆う薔薇の強烈な香りが神経を麻痺させてくる。 「ならばわたしが片付けよう。君は今、彼を張っているんだったね?」 「――はい」  正直、カルヴィンはゴドフリー公爵が何を言わんとしているのかがさっぱりわからない。とにかく、屋敷の中に充満する鼻を突き刺すような鋭く強い薔薇の匂いが神経を逆撫でする。ただただ頷いて見せた。 「すまないがほんの一時だけでいい。彼から手を引いてもらえるだろうか。ずっと付きっきりだとかえって怪しまれるからね。わたしがそれとなく誘い出してみよう。そうすれば彼の正体の何もかもがはっきりするだろう」  果たしてゴドフリー公爵はクリフォードに何をしようというのか。 「いいね?」  カルヴィンは居たたまれない気持ちでいっぱいだ。ゴドフリー公爵の有無を言わせない雰囲気に圧されてしまえば拒否することさえもできない。  クリフォードの屋敷の前で倒れ、彼の屋敷に入り浸っていることを告白する気にもなれず、ただ頷くしかなかった。 《Scene 2:a culprit /完》

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