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第1話

 金も人もビッグアップルでさえも。  情報1つで、動かしていたマフィアのボスがいた。  そんな彼にも不遇の時はあり、手に入らなかった愛があり、気の休まらずに眠れない夜もあった。  彼の名前はメルキオール・ガルビーノJr.。  世界中にいると言われているメルキオール・ガルビーノの息子の1人に過ぎなかった。 『お前に「メルキオール・ガルビーノJr.」の名を授けよう』  1948年の6月。大勢の構成員を右にも左にも従えた重々しい言葉は不思議と15歳の彼に軽く聞こえた。  どの道、このままだと野垂れ死ぬか、何らかの犯罪を犯してブタ箱へ行くかしかない。だったら、目の前の男をすげ替えたとしても、生き延びたい。  それが李龍の願いであり、本能だった。

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