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第25話
「……ベリーニの店には?」
元・マッカーシーの店主・ベリーニは現在、李龍のかつての部下の経営する三つ星ホテルのラウンジで酒を振る舞っている。確か、新しい店名は「Seven Nights」といっただっただろうか、と李龍は思う。
「Seven Nightsですね……確かに素敵なお店ですけど、私はマッカーシーの方が好きでした」
バーとしても場末のバーで、立派な什器や夜景、フロアスタンドがある訳ではない。
席もカウンターが7席で扱っている酒類も高価だったり、希少なものがあったりするかと言われれば違うだろう。
「何者でもない自分になれた。貴方にもその自分で会うことができた……そんな場所はもうあの国にはないのかも知れません」
無情にも李龍の乗る飛行機のフライト時間が迫る。
ビッグアップルにいたら、運に任せて、慶喜に会いにも行かなかったのに、今はこの時を逃せば、2度と会えないのではないかという焦燥感に駆られる。
「どうかお元気で」と言う慶喜の唇に李龍は指を軽く当てる。
「Certainly(確かに)」
「……」
「I don't have that place anymore, next is coming in June.(あの場所はもうないが、次は6月に来る)」
On the season when sunflower bloom...(ひまわりの咲く頃に……)
To meet you...(貴方に会う為に……)
On this land...(この土地に……)
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