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初めてのお仕事 6
「……っあ、あっ……んっ……」
腰をゆるく揺らすだけで、紘弥は濡れた喘ぎをこぼした。
その目が潤んでいるのを見て、浩一も身体が熱くなる。
「もっと奥まで……へいき?」
問いかけると、紘弥は頷いて、訴えるような切なげな声で言った。
「ぜんぶ、奥まで、ください……っ」
浩一は唇を噛む。紘弥はこれほど熱にまみれていても、ちっとも淫猥なところがなくて、健気で可愛くて綺麗だった。その分、余計に男を狂わせると浩一は思う。
腰を強く押し付けて揺らすと、紘弥は甘い声で鳴いて身を震わせた。泣き出しそうに潤んだ瞳に苦痛の色がないかどうか覗き込もうとすると、すがるような目で見上げられる。
「紘弥くん……」
半ば無意識に名前を呼んで、吸い寄せられるように口づけた。紘弥もまた浩一の背中に手を回して、懸命に浩一を求めてくる。
「……んっ、ん……んっんっ……」
きっと息苦しいだろうに、それでも口づけをほしがるのが愛おしかった。その最中にも、紘弥の中は浩一の雄に絡んで、吸い付いて、まるで吐精をせがんでいるようだった。
こんなに綺麗で男を悦ばせる身体があったなんて、と、浩一は溶けそうな頭で思う。
桜色に色づいた肌の、汗ばんで熱を帯び、しっとりと心地よく馴染む感触も、男に快感しか与えない内側も、潤んだ瞳も赤い唇も何もかも、浩一の心を奪うものでしかなかった。
紘弥の言葉通り、全部自分を差し出すしかないような気持ちで、紘弥の快感を探ろうと腰を遣う。そうすると、紘弥はすぐに濡れそぼった声を上げた。
「やんっ……! ん、うっ……」
乱れた呼吸と喘ぎ声で赤い唇が揺れるのがやけに色っぽくて、もっと見たいと思って赤く尖った乳首を指の腹で転がすと、泣きそうな声が唇からこぼれた。
「やぁんっ……浩一さん、だめ……!」
声と同時に、内側もきつく浩一を締め付けてきて、紘弥の切なさがそのまま伝わるようで浩一も眉を寄せる。
こんなに感じやすいのに、あんなに健気に受け入れてくれたのかと思うと、胸がいっぱいになった。
「紘弥くん……っつらい……?」
浩一も息が荒くなるのを抑えきれなかった。紘弥は涙に濡れた目で浩一を見上げて、ふるふると首を振る。
「……浩一、さんがっ……抱いてくれて……うれしいです……」
乱れる息の合間でそう言って、紘弥は浩一の肩に顔を寄せてきた。その額に唇を押し付けながら、浩一は目眩を覚える。
「あ、あっ……あっやっ……」
紘弥がこぼす喘ぎは耳から脳を痺れさせるようで、浩一はきつく目をつむった。
「……ごめんっ……俺、もう、もたないかも……」
腰が溶けそうに気持ちよくて、紘弥の何もかもが蠱惑的で、理性も半ば途切れ途切れだった。
「んっ、がまん、しないでくださ……あっ……!」
言葉の途中で紘弥の喉が反った。浩一が耐えきれずに紘弥の奥を強く突いたせいだった。
こんなに感じやすい子にあまり激しくしたらかわいそうだ、と思う思考力はかろうじてあったが、紘弥の優しさと身体の誘惑に負けてしまった。
腰を大きく遣って紘弥の弱い場所を擦り上げ、引き抜き、紘弥の上げる悲鳴のような声すら浩一の耳には甘くて、紘弥の身体をいたぶるように揺さぶった。
「ああぁぁっ……やんっ! もぉだめっ、浩一さんっ……!」
涙声で紘弥が訴えるのとほぼ同時に、紘弥の中が浩一を絞り上げるように締め付けてきた。
その激しさと熱さにたまらず、浩一も精を吐く。息を詰めてシーツに手をつくと、汗がぼたぼたと紘弥の肌に落ちた。
しばらくは互いに荒い息をつくことしかできなかった。
脳に酸素が戻ってくるにつれて、こんなセックスをしたのはいつぶりだろう、とぼんやりと考え、答が浮かばないのでもしかすると初めてだったかもしれない、と思った。
紘弥はぐったりとシーツに身を沈めていて、その睫毛が涙で濡れているのを見て、優しくしきれなかったなあと思う。詫びるような気持ちで、こめかみに口づけた。
少し身体を起こしてみて、初めて紘弥が射精していなかったことに気が付いた。絶頂を迎えていたのは明らかだったから、ドライでイッてくれたのかと思い至って、何とも言えず感動を覚えた。
最後は優しくしてやれなかったけれど、気持ちよくなってくれたなら嬉しいと思いながら、紘弥の中からペニスを抜こうとしたとき、紘弥がかすれ気味の声を出した。
「ま、待って……くださ……」
見ると、紘弥はひどく切なそう目をして浩一を見上げていた。
「どうしたの? どこかつらい?」
訊くと、紘弥は恥じ入るように目を伏せて、さらにその目を潤ませ始める。
「えっ、紘弥くん? 俺、何か……」
そんなに負担をかけただろうか、と思って顔を寄せた浩一から、紘弥は目を逸らして、蚊の鳴くような声で言った。
「……おれ、その……メスイキしたの……初めてで…………だから、まだ……動かないでください……」
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