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直純くんの火遊び 1

 ちょっとした同窓会のために地元に帰った流れで、大学卒業を控えた友人とその友人、さらにその他大勢のコンパに紛れ込み、営業スマイルを濫用しつつ盛り上がって、三次会は男ばかり4人の宅飲みになった。  直純を除く3人は卒業を目前にした大学生で、2人は就職、1人は進学。  すでに大人の世界にどっぷりと浸かって大きな声では言えない仕事を生業にしている直純からしてみると、何だかみんな初々しく可愛く見えた。  帰ってきてみるまでは、もっと皆の健全さが眩しいだとか自分の仕事が後ろ暗いだとか感じるものかとも思っていたが、存外そんなこともなかった。もともと好きで楽しくやっている仕事だし、その上彼らの就職先の上の上のそのまた上の人間が、当たり前のようにお客様としてやってくる事実にはちょっとした優越感を覚えるほどだった。  ──可愛いなぁ。  同世代だが、彼らを見ているとこれから大人になっていくように思えて、直純はにこにことしてしまう。そして酒も回ってくると、いたずら心まで芽生えてきた。 「お前は東京で何してんだっけ? サービス業っつってたけど……」  缶ビール片手に顔を赤くしたかつての同級生が話を振ってきて、直純は微笑みつつ答えた。 「僕はねー、先生とか親には内緒の仕事」  なにそれ、と、今日会ったばかりの就職組の青年が食いついてきて、直純はますます笑顔になる。 「あのねぇ、お金持ちのおじさんとかおにいさんとえっちするお仕事」  えっ、と全員の声がそろった。直純はつまみの枝豆を口に入れ、わざと舌を見せて指を舐めた。それだけで誰かの息を飲む音がする。  日頃遊び慣れた大人の男達を相手にしているのだから、多少リア充だろうがそうでなかろうが、こんな若い男子を誘惑するのは簡単だった。  ゲイやバイでなくても、直純のように中性的で身体も細い青年が受け身になって誘えば、大抵の男は意外とその気になってしまうものだ。 「それ……えっ、風俗ってこと?」 「チョー高いけどね。ググッてもお店出てこないし。セレブ向けの秘密の遊び場って感じ」 「うっそ……まじであんのそんなの」  好奇心をくすぐられる顔をしながら、若い男子はさりげなく座り直す。 「そ、フライデーされる心配のない隠れ家なお店で、僕みたいな若くて可愛い男の子とうんと気持ちいいことするの。僕もけっこう指名つくんだよ」  言いながら直純は目を細める。3人の中に、もうその気になっている目があった。頭の中はきっと男達に蹂躙される直純の想像でいっぱいだ。 「僕のお尻すごいって、評判いいんだから」 「……やっぱ尻なんだ……」  ごく、と露骨に唾を飲み下しながら呟いた進学組の学生に、直純はわざとゆっくりと返した。 「お尻だよぉ。お客さんに会う前にね、お尻の穴をやーらかくしておくの。そしたら後はもう、お客さん次第かな。ゆっくりおしゃべりして、お風呂に入って、じっくりえっちするのが好きな人もいるし、部屋に入ったらすぐに脱がされて、ちんこ突っ込まれることもあるよ」  ゴムはちゃんとつけるけどね、と直純が微笑む頃には、その場の全員がもじもじとしていた。  無邪気を装った顔で彼らの様子を眺めながら、直純は心の中で思う。  ──ごめんねぇ、おちんちん痛いよね。 「……ね、もしよかったらなんだけど、シャワー借りていい?」  最後の一押しとばかりに直純が言うと、部屋の主は目を見開いて大きな声を出した。 「へっ!?」 「あのね……ゴムとローションあるなら、僕のお尻試してみてもいいよ。タダでできる機会なんてめったにないんだから」  おっきな会社の社長さんだってタダじゃできないんだよ、と言うと、一人が耐えきれなくなったらしく、勢いよく立ってトイレに駆け込んでいった。 「……僕、シャワー借りてもいいのかな」  どうぞ、と言った部屋の主は声が裏返っていて、こんなに初々しい男の子とするのはいつぶりだろう、と直純は妙な感慨を覚えた。

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