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バラ:白

ふと窓の外を見ると、見慣れた顔と、知らない女の子。 「……また告白?」 僕の恋人はよくモテる。 「さっき何してたの」 「さっき?」 「校舎裏。女の子と」 「ああ、見られてたの」 ボケっとしちゃって。 僕の気持ちも知らないで彼は穏やかに笑う。 「嫉妬した?」 当たり前じゃないか。 どこに恋人が告白されてて何も思わないやつがいるんだ。しかも、可愛い可愛い、女の子。 「うるさい。どーせ告白でしょ」 「うん。付き合ってる子がいるからって断ったよ」 「……なら、いい」 その返事を聞いて、ほっとする。毎日のようにある彼の告白に僕は、思った以上に応えていたようだ。 「ねえ、」 「なに?」 呼びかけると、直ぐにこっちを向いてくれる彼。それが嬉しくて。 「なんでも、ない」 意味もなく、呼んでみたりして。 「なあに、それ」 きみが、笑う。 「今日で、何日目?」 毎日毎日、懲りずによくやる。 10日以上続く告白ラッシュ。 「……ああ、文化祭か」 ふと思い出す。うちの学校の文化祭には特別なジンクスがあるらしい。 なんでも文化祭終わりの花火を一緒に見た恋人は幸せになれるんだとか。 恋人、と限定されてるから、今のラッシュがあるのかと、やっと謎が解けた気分だ。嬉しくはないけど。 「ジンクス、ねぇ……」 そんなものに、縋りたくなるほど。 「ねえ、」 「なに?」 今日も君は穏やかに笑う。 僕の前でだけ。 「大好きだよ」 隣の彼が目を見開く。珍しい彼の表情がなんだか面白くて、嬉しくて。 「大好きだよ、心和くん」 緩みきった顔で、彼に言う。 「僕が、いちばん、誰よりも、こよりくんのこと好きだからね」 誰に好きと言われていたって、付き合って欲しいと請われていたって。 それだけは、ちゃんと分かっててねと念を押す。 「ちぃちゃん、ほんと可愛すぎ……」 反則だと顔を真っ赤にして彼が言う。 その顔を見て、甘い声を聞いて、心和くんが僕のことをちゃんと好きなんだと再確認する。疑ってるわけじゃないけど、そりゃ不安にもなるわけで。 僕が心和くんを好きなくらい、心和くんも僕のことが大好きなんだと時にはちゃんと確かめないと。いつもいつも僕ばっかりがドキドキしてて悔しいから。 「心和くん、知らないの?」 ゙きみの恋人は僕だもの゙ 恋人が可愛く見えるのは当たり前でしょと笑ってみせる。 恋は盲目ですから。 そーね、なんて言って君は愛しげに僕を見て笑う。 「……俺だって、ちぃちゃんのこと誰よりも愛してるからね」 知ってる、なんてちょっと偉そうに返すと、よくモテる僕の恋人は、幸せそうに笑った。 「文化祭の花火、一緒に見ようね」 「……うん、見る」 特に取り柄もない僕だけど。 誰に好きと言われていたって、付き合って欲しいと請われていたって。 僕がいちばん、誰よりも、君のことが好きだよ。 だからやっぱり、君の隣は僕がいちばん似合うと思うんだ。 ねえ、そうでしょう?

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