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第19話
店内に入って最初にあるのは野菜コーナー。
現在の時刻、午前11時。一通り見て帰って作って…などしてたらちょうどお昼の時間だ。自分からカートを押す誠。
(…これは…新嫁…?)
なんだか新婚みたいで篠宮はニヤけが止まらない。口許を手で覆って崩れる表情を必死に隠す。
「誠、昼何食いたい?」
「え?篠宮くん食堂行かないの?」
「俺休みの日は行かないよ」
「そうだっけ…?」
「…うん」
(櫟田んとこに行ってたからそりゃ知らないよな!!!)
篠宮は心の中で叫ぶ。練習がない日は篠宮は部屋にいるが誠は朝から櫟田の部屋に行っているので知らないのは当たり前だ。朝から部屋を出ていく誠を見送るのは本当に辛かった。見送った後、誠が櫟田の部屋に行って、付き合っていたらする事は一つだろう。想像するだけで胃がムカムカするし頭が痛い。昼食から話が逸れてしまった。
「あ、で、何食う?」
「…俺料理できない」
「俺ができるから大丈夫だよ」
「…本当に?えっとね、ベタだけどね…」
「うん」
「オムライス…食べたいな…」
「うん、わかった」
目を泳がせながらお願いしてくる誠。それが可愛すぎて篠宮はケチャップで『スキ』と書こうと決めた。
とりあえず玉ねぎをカゴに入れると次は肉類と冷凍食品のコーナー。鶏肉とミックスベジタブルもカゴに入れる。
ケチャップに塩コショウに…
「俺たちの部屋って本当に食料品なかったんだね」
「…そうだな」
食料品の他にも調味料など色々カゴに入れていくと最終的にレジ袋が3つになった。
誠の左手に1つと篠宮の両手。篠宮は右手にレジ袋を2つまとめて持って、左手を誠に差し出した。
「…手」
「え?」
「帰りしてくれるって誠が言った」
「あ、そうだったね、はい」
行きと同じようにきゅっと繋がる手。
久々の休みと隣には大好きな誠。
右手に持った2つのビニール袋で少し痛いけど気分は最高だった。
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