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第39話

遂にやってきた実家帰りの日。今日篠宮は、電車と新幹線を乗り継いで夕方頃に実家に着く予定だ。荷物は小さめのキャリーケースひとつ分。まだ新幹線に乗る前の電車内なのに溜息が止まらない。運休も遅延も滅多にない日本の電車が憎い。憂鬱過ぎて膝に肘をつきゲンドウポーズをキメてしまう。 「…はぁ…」 「…おにいちゃん、…だいじょうぶ…?かなしい…?」 「…?」 ガタンゴトンと揺れる電車の音に紛れ高くか細い声が聞こえる。隣を見ると小学生低学年くらいの女の子が篠宮の隣に座って足をプラプラさせていた。女の子の傍に保護者らしき人はおらず電車内はガランと空いていた。女の子は篠宮をくりくりの目で見上げて返事を待っている様だった。 「…悲しい、のかな…嫌なんだ、お兄ちゃん。電車降りたくないなぁ…」 思ったより情けない声が出て苦笑する篠宮。 女の子もそれにつられるように眉尻を下げて喋りだした。 「まみもね、今日ひとりぼっちでおつかい、なの。ママにね、電車、ひとり嫌ってゆったのにね、しゃかいべんきょうだからって…」 「…社会勉強かぁ…お兄ちゃんと同じだね。」 いくら社会勉強だと言ってもこんなに小さい女の子に電車を使う距離のお使いは少し早いのでは、と思う篠宮。 いや、でも自分が小学生の頃にはもっと酷い社会勉強という名のイビリを…、どこの親も考える事は同じなのか。 「お兄ちゃん、がんばってね、まみもがんばるよ!」 「お兄ちゃん頑張るよ。まみちゃんありがとう」 女の子がニコ!っと笑い、篠宮の頭をよしよしと撫でた所で新幹線に乗り換える駅に着く。 「じゃ、お兄ちゃんここだから。まみちゃん、さようなら」 「ん!ばいばい!またおはなししようね!」 篠宮も女の子の頭を軽く撫で、電車を降りた。 その足取りは電車に乗る前より少しだけ軽くなっていた気がする。

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