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第1話
パラパラ、ザーザー、雨の音を聞くのは心を無にしてくれ、リラクゼーション効果もある。傘で視界が狭められ、一人の世界に浸れる。室内干しの臭いはちょっと嫌だけど、クーラーがかかった部屋で大きな氷を入れたアイスコーヒーを飲みながら宿題をするのも悪くない。
「……ない」
ない、と言っても家の鍵じゃない。両親が共働きで鍵っ子である僕がそんなミスを犯すなんてない。
傘立ての前で立ち尽くしていると、昇降口から自分の靴を持った岡田君が声を掛けてきた。
「傘、どうした?」
同じクラスではあるが、今日は体育はなかった。こんな時でさえ半パン半ズボンなのは元気の印だろう。
「忘れたのか?」
「……」
「あ〜……一緒に帰ってやりたいけど、今日は俺、カッパなんだよな。ま、頑張って帰れ!」
緑のカッパに着替え、颯爽と水溜まりの水を跳ねらせながら走って行った。
また一人になり、底に溜まった汚い水を見る。
閉じたら他の青い傘と変わらないが、一箇所に星が集まっている場所があるのが特徴の傘だった。僕は何本かある青い傘をその場で回して確認し始めた。
賑やかな声が近付いてきたのは、残り一、二本となった時だ。
「雅君、傘ないの?」
「あたしたちの傘に入る?」
「先生達に言えば透明な傘貸してもらえるよ!私、この間貸して貰えたもん!」
「ビニール傘だよ、桜井さん。今から先生達会議って言ってたし、木ノ下さんたちが濡れちゃうから遠慮しておくよ」
笑みを浮かべ丁寧に断れば、彼女らは頬を染めて「頑張ってね!」と言い残し、その場から去って行ってくれた。これで集中出来る。
何本かは開かせて貰ったけれど、自分の傘ではなかった。
(ないか……)
辺りを見回せば足音はまばらになり、開かれたドアからは地面に叩き付ける雨が見えていて、ため息を吐いた。
スマホは持っているものの、両親は無理だし、祖父母は県外に住んでいる。
玄関の板を渡ってドアの前に立つと、風に乗った雫が顔に当たった。
このまま帰るしかないのか、落胆よりも開き直りの方が強い。幸いにも今日はセンセが来る日じゃない。
黒のパーカーの帽子を被り、背負ったランドセルを頭に乗せて後ろ足に力を入れた。
「………くーん!」
目線を足元から前に向けると、隣の体育館から巨体な人物が姿を現し、こっちに走ってくる。
「……夏樹さん ?」
半袖から鍛えられた腕が、ベルトにお肉が少し乗り、真っ直ぐのボタンが上向くほど豊満な胸を揺らしていた。
「はあはあ……。遅れて……ごめん、ねっ……はあはあ……」
膝に手をついて荒く呼吸する夏樹さんのつむじが見える。
濡れた黒短髪から雨粒がふっくらとした輪郭から床に落ち、ゴクリ、と生唾を飲み込む。
「それから、これ、おち、てた……よ」
深く息を吐き、左手から子供用の傘を渡してくれた。開いてみると僕の傘に間違いはなかった。
落ちていた、というから誰かが間違えて持っていったのかもしれない。せめて乱暴に扱わないで欲しいんだけど。
「あ……ありがとう……。でも、夏樹さん、出掛けたたんじゃないの?」
「さっき、ちょうど終わってね。雅君と一緒に帰ろうと思って学校に寄ってみたんだ。そしたら君の傘が落ちていて、もしかしたら帰れないんじゃないかと思って……」
頬をかいて笑う彼のシャツは肌に張り付き、つんとしたピンク色の蕾が露になっていた。夏樹さんは自動車免許を持っていない。どこへ行くにも自転車やバスで行くような人で、前の勤め先の交通手段もそうだったらしい。
自分のランドセルからタオルを取り出し、夏樹さんの前に立った。
「いいの、借りて……?」
「迎えに来てくれたお礼。拭いたら帰るよ」
「!ありがとう……じゃあ、」
「じゃあ、お座り」
伸びてきた手から逃れるようにタオルを背にやると、視線が合った。太い首から流れた雫はシャツの中に入っていくのが身長差のある僕からにでも分かった。
「雅、く……ん?」
未だ穢れを知らない子犬のように、僕を見つめている。それがひどく秘めたる加虐性欲さを増してしまうのだから、
(夏樹さんは可哀想だなあ。僕なんて放っておいて帰っておけば良かったのに)
「聞こえなかった?お座り」
「え、でも……」
「おーすーわーり」
ほんの少しだけきつめに言うと、困惑しながらも夏樹さんは腰を屈め、同じ目線になる。
「そうじゃなくて。ぺたんと座って?」
「そこまでしなくても……」
眉を寄せ、困ったように笑われるも見続ければ狼狽え始めた。
「大丈夫。今は誰も通らないよ……?」
「ん……っ、先生とか……」
「まだ会議してるから」
会議が終わる前に済ました方が最善だと理解したんだろう。ゆっくりと腰を下ろしていき、ぺちゃんと座るも、ぴくんと背筋が伸びた。
「そのまま動かないでね」
「……!!」
近寄るなり、肩が小さく跳ねる。つるっとした僕の谷間に鼻と口が当たり、引こうとする夏樹さんを逃がさないように強く押し付けた。
「まずは首元から……。うわあ、べっちょべっちょ。お昼暑かったから、汗も混ざってるんじゃないかな。気持ち悪いでしょ」
色黒くなった小麦肌に下から生え際へとタオルを動かしていく。吸収性の高いタオルだから直ぐに水気は取れていくが、じわじわと吹き出てくるのは一体何なのか。
「ふ、ふっ、ふー……」
横に垂れる腕をどうしていいものかわからず、呼吸している。ふむ、まだ、こんなものか。
「次は頭。夏樹さん、髪の毛柔らかくて気持ち良いんだからちゃんとトリートメントもしなくちゃ傷んじゃうよ」
毛先の露を拭いていき、頭をわしゃわしゃとしていく。顔に隙間ができないように胸を引っつけると熱い呼吸が谷間を通って上ってきた。
「あっ……ふぅ、ふー、ふ……」
「はい、ぎゅー……」
「……っ!?」
さらに顔を押し付けてあげると、顔の部位がくっきりと胸やお腹に伝わってくる。
混乱が収まらないうちにタオルで指の形を作り、小ぶりな耳の穴にずぼっと入れてあげ、中をお掃除、お掃除。中で回したり、グリグリしたり、耳朶を撫でてあげる。反対側も、グリグリ。
「あ……っ、ふ…ぅ、ふぅ、ふう……!!」
夏樹さんの腕が上がってくるのを確認すると、僕もその場に座り込む。やっぱり、百人くらいが通った雨の日の床はお尻が冷たいなあ。突然のこと過ぎて胸とお腹が離れたことに気付かなかったのか、まだ夏樹さんは顔を真っ赤にしてはへはへしてるけど。
そんなのお構い無しにボタンへと手をかける。盛り上がった第一ボタンは片手が触れただけで簡単に取れ、二、三とぷちぷち取っていく。
「……!?みや、びく……っ、だめ……っ!」
「ダメ?そんなことないよ、ほら、ここが一番濡れてるよ?」
遮る手を交わし、絞れそうなほど雨に濡れた股に片膝を乗せると夏樹さんは慌てふためいた。
「っ、雅君……、!!」
「どうしたの?ほら、首から胸、お腹まで雨でぐじゅぐじゅに濡れてる。ね?」
今度は僕が純粋無垢のフリをして上目遣いし、膝でやわやわな玉を暴くようにぐるぐると回してあげる。快楽、倫理、色んなものに怖くなったのか、膜が張った目をギュッと閉じてしまった。夏樹さんはとっても可哀想で可愛い。そんな姿に背中のゾクゾクが止まらない、脳が溶けてしまいそうだ。
距離を詰め、じんわり熱い肌に密着し、左手に持ったタオルを鎖骨の溝に沿って動かしていく。みーぎ、ひだーり、みーぎ。
まだ序の口なのに夏樹さんはふるふると小刻みに震えている。まだ怖さが残っているだろう彼のために僕は赤く熟れた耳へ口を近付けた。
「生徒に弱々しい態度を見せていいの?夏樹センセ」
僕の片膝が上下に揺れる。
「なーんにも怖くないよ、ただ拭いているだけ」
「あ!は、っ…あっ、あ……!」
「うるさいよ」
「……〜〜っ……」
お腹を拭き終わり、形の良い胸筋部位へとタオルを上げていく。時折、谷間を触りながら上胸を拭き、
「ふっ……♡」
夏樹さんの乳輪は元から大きな円を描いており、乳首も誰にも触れさせたことがないのか?と疑うほど大ぶりで、桃色。膨らみと凹みのある下胸を拭きながら、指でこりこりと弄ってあげると耳下の腰が面白いくらい跳ねている。
「雅く、雅君……っ!!」
「はいはい、落ち着いて。もう少しで終わるから」
ギュッ、ごりっ、こりこり。
「ひぃいい……〜〜♡♡♡」
僕の家に来た頃はこんなんじゃなかった。お人好しで気弱な独身の叔父さん。学校の先生を目指していたっぽくて、週に三回、僕に勉強を教えてくれる優しい人。あることが分かる前までは玩具にしようとも思わなかったわけで。
それが今じゃ触れるだけで唇を噛み、口の端から涎を垂らすほどに調教出来たのだからやっぱり素質、あると思うんだよね。
「夏樹さん」
「え?あ……っ……ん…ん……、ん……」
湿っぽい唇は重なるうちに熱いものに変化していく。荒く呼吸する夏樹さんの息が漏れないように何度も角度を変えながら交わしあったのだった。
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