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第29話

 アルトニーの腰を掴みしめていた手を、ウァラウムはようやく放した。  そして、彼がするように背に回し抱きしめた。  強すぎず、弱すぎず。  彼の自由を損ねないよう、ゆるりと抱きしめた。  アルトニーはそれを感じ取ると、薄く開いていた瞼を閉じた。  意識が遠くなってゆく。  今度こそ、私は死ぬのだな。  ウァラウムが言うように、輪廻転生を繰り返し私は全く別の人間となるのだな。  そして、この熱いひとときも忘れてしまうのだ。 「……のか」 「何?」  時折意識が飛ぶのか、言葉を切らせながらアルトニーは呟いた。 「忘れてなんて、やるものか、ウァラウム。貴様の事を、貴様が私に仕出かしたことを、綺麗に忘れてやったり、するものか……」

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