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第一章 棘のないバラ ~出会い~
大地には、痛いくらいまぶしい太陽の光が容赦なく降り注いでいた。
ここは、魔闘士を育成する魔導学校。
その第三屋外闘技場にずらりと集まった魔闘士候補生たちは、流れる汗をぬぐいもせず高い壇上の面々を見上げている。
ひときわ高い場所にいる校長の訓示は長く、傍に控えた大魔闘士の一人・左近充 明(さこんじゅう あきら)はあくびをかみ殺した。
こんなおもしろくもない話を、下の連中はまっすぐな目を向けて聞いているのか。
(いや、違う)
そう、明は思った。
彼ら候補生たちの目の先にあるものは、光り輝く大魔闘士の魔装束なのだ。
金糸銀糸で飾られた、美しい光輝く大魔導衣。
魔術のみを駆使する魔導士と違い、魔闘士は体術も使う。
魔導士よりずいぶんと短い丈のローブだが、通常の魔装束とは内から輝く光が違う。
発する重みが、違う。
これを身に着けることが許されるのは、12の星座の加護を受けた12名の大魔闘士のみ。
そして明は、蟹座の加護を受け大魔導士となった少年だった。
どいつもこいつも、目をぎらぎらさせて見てやがる。
喉から手が出るくらい欲しかろう。この最高位の魔装束が。
(欲しけりゃ実力でぶんどってみろ。まぁ、お前たちには100年かかっても無理だろうがな)
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