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第一章・28
「お前の場合は、このバラでいいんじゃねえかな」
うつむいてしまった愛の機嫌をとるように、明は大げさに明るい声をたて、一番ふくらんだバラのつぼみを手折った。
「お守りだ」
愛は、明の差し出した魔導薔薇のつぼみを両手でそっと包んだ。
「お前、もうスイレンはやめてバラになれ」
「スイレン?」
「いや、ほんの例えだけどさ。この花迷宮のバラみたいに大きく咲き誇れ、ってことだ」
「私、こんな立派なバラになれるでしょうか」
「なれるさ! それからよ、オレの事『左近充様』って呼ぶのも、もうやめようぜ。オレたちは同じ大魔闘士なんだ。明、って呼べよ」
「でも、けじめはつけないと。他の候補生もいますし」
「じゃあ、二人でいる時くらいはタメ口で。な? それならいいだろ。言ってみろよ」
「あき、ら……」
へへ、と笑う明の目は優しかった。
もうすぐ満月を迎える月の光は、優しくふたりを照らしていた。
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