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第五章・20

「私も。私も明の事、愛してる」  そう返すと、彼は茹でた蟹のように真っ赤になって。  でも、愛おしげなまなざしはそのままで。 「ありがとう」  そんな事を、小さくかすれた声で言ってきた。  ありがとう、はこちらの方だよ、明。    汗は、すっかり乾いていた。   二人で見つめ合って、しばらく風を頬に受けていた。  優しい風は二人を包んで、流れていった。  

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