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20Lv?だけど魔王に挑んでいいですか?
罰の身代わりとなったセナは、あの後も気絶するまで身体を求められた。結局のところアディは元からジゼを罰する気はなかったようだ。
宣言通り1週間ほどほぼ魔王の部屋から出られなかった。アディは相変わらずセナの腰を掴んで眠っている。
「まったく、呑気な魔王だな」
セナはアディの白い髪の1房を摘んで引っ張ってみた。
「戦の世より平和な世の方がよいとは思うが」
「わっ、起きてたのか」
「お前が髪を引っ張る様が可愛いかったのでな」
「おはよう、アディ」
「・・・おはよう、セナ」
セナはアディの髪をわしゃわしゃ撫で回しながら挨拶をすると、アディも少し和らいだ雰囲気で挨拶を返した。
「さて、俺もある意味魔族としての掟を破って部下への処罰を軽減したがどう言い訳を見繕うか」
「一緒に言ってやるよ」
「セナは男前だな」
その時、朝からの甘い雰囲気をぶち壊すかの如く扉と壁が同時に破壊される音がした。何事かとセナはびっくりして飛び上がると、扉からはジゼとロビが入って来た。
壁を破壊したのは銀色の巨大なドラゴンだった。ジゼ達はともかく、セナはドラゴンに目が釘付けだった。
「何をやっている、お前達」
「恐れながら、魔王陛下!やはり罰を受けるべきは、この私でございます!セナをお返し頂きたい」
「おい、コラ魔王!タイマンだ!表に出ろよ」
ジゼは処罰が納得していない様子で、ロビの口調が元のヤンキーのように素に戻っている。と言うことは、あの銀色のドラゴンはもしやと思ってセナはシーツを巻き付けて駆け寄って鼻の辺りに抱き着いた。
「おおおおおお!!!ドラゴンー!見ろよ、アディ!ドラゴン!これ、リドレイだよな?」
「グルルル」
銀色のドラゴンは喉を鳴らしてセナに擦り寄る。リドレイのようだが、ドラゴンの状態の時は人語を喋れないようだ。
アディはやれやれと溜息をついた。
「お前達、言いたい事は後にしろ。玉座で聞いてやる」
リドレイに抱き着いているセナを引っぺがすと、アディは支度を整え始めるのだった。
魔王の玉座の間に召集をかけられた魔族達は、魔王の言葉に絶句した。
「セナは俺の伴侶となった。以前取り決めた掟はこれより無効となる」
「・・・・・え?」
セナも絶句した。一体いつアディと将来を誓い合う仲になったのか検討もつかない。
「せ、セナ・・・いつの間に魔王陛下とそのような関係に」
「いや、俺もいつそんな事に?」
「お前が言ったではないか。俺の事が気になるとか、好きだから身体を預けていると」
「んんんんんんん!?」
初日辺りにベッドでそんな事を言った気はするが、そこからそれ以上の関係になっているはずはない。
「お待ちください、魔王陛下!それならばセナの首筋に一生物の傷を残した私が、責任を取ってセナの伴侶に」
「ジゼさまは、すっこんでてよ。セナは僕と次もデートするって言ったんだから」
「あ、それなら俺様が今魔王を倒せばセナは俺様のもんだよな?」
みんな口々にセナの所有権を張り合っているが、魔王としてのアディはちょっと楽しそうに笑いながら見ていた。
セナはアディが魔王でいられる理由が少しわかった気がした。
「アディ」
「なんだ?セナ」
「俺は誰かの伴侶とかにはなれないと思うけど、勇者で居ていいか?」
「・・・」
この世界にやって来て、元の世界に帰れないと言うならここが第二の家になってもいいだろうかとセナは思った。なにより魔族やアディと居ると楽しい気持ちがある。
多分家族にはなれないが、勇者ならここに居る理由が出来るのだ。
「いいだろう、勇者としていつでも挑んで来るがいい」
「ありがとう」
セナは嬉しくなって満面の笑顔を、アディに向けた。アディもいい雰囲気だと思ったのか、セナに口付けようとしたが額に一瞬ピンッと何かが当たった音がした。
少し顔を離すと、デコピンを構えたセナが笑っていた。
「魔王のHP1減ったかな?」
アディは面食らった顔をしたが、いつもの不敵な笑顔になりセナを抱き締めた。
「レベルマックスになったのではないか」
セナは抱き締められてい、アディの表情はわからないが、魔族の部下達は「魔王陛下ズルいとか」「魔王のニヤけた顔、気持ち悪い」「次の魔王は俺様だ」とか口々に言っているのは聞こえた。
セナはここで勇者として生きる理由が見つかり、前向きにアディを抱きしめ返した。
「レベル不明だけど魔王に挑んでいいよな?」
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