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26ドラゴンは快適じゃなかった

 次の日、やっと昼頃に起きれたセナは午後は北大陸の南に位置する交易港町に出掛けることになった。ぴよ太はロビとお留守番だ。  リドレイも付いていくと押しまくられ断ろうとしたが、ドラゴン形態のリドレイの背中に乗せてやると言われ好奇心負けした。ファンタジーの醍醐味ドラゴンと喜んだのも束の間、セナはアディのマントの中に包まれていた。 「セナ、あまり俺の中で動くな。落ちるぞ」 『だって!めちゃくちゃ風圧が!』 「ドラゴンの背中に直に乗っていたら当たり前であろう」 『くっ!俺はもうリドレイには乗らない!』 「だ、そうだぞ?リドレイ」 「ギュッ!?ギュオオオオーーーーッ!!!」  心なしかリドレイの叫び声はガチ泣きの声に聞こえた。  しばらく飛んでいると近くで降ろされた。歩けば港町まで1時間以内で着く距離らしい。いかに魔族領とはいえ、さすがにドラゴンの姿のままでは人間は驚くのだろう。   徒歩で進みながら、セナは異世界ィアーリウェアに来た日の事を思い出した。セナは会社帰りに、木に引っかかるヒヨコのぴよ太を助けようとして落ちた。だが目を開けるとこの世界の空から落ちていた。  だが落ちたセナを魔王であるアディが受け止めた事で、勇者にされたり魔王城に今でも居座るようになったのだ。 「それにしても、やっぱり落ちた理由がわかんないよなぁ」 「俺と出会うための必要な演出・・・」 「じゃあ俺じゃなくてぴよ太が落ちてきたら、ぴよ太が運命の人だな」 「焼き鳥とは恋はできぬ」 「焼き鳥って・・・」  アディはロマンチストなところがあるので、セナを何かと運命の人にしたがる。そんなアディは今は放置しておいて、後ろから着いてくる死にかけの大男が気になった。 「リドレイ、悪かったよ。もう背中には乗ってやれないけど、ドラゴンなリドレイはカッコいいからさ」 「セナが俺様の背中に惚れるはずだったのに・・・おかしい」 「乗った事ないんだから飛んでるドラゴンの風圧の事まで、わかるわけないだろ」 「愚かだな、リドレイ。セナはこれから俺の上に乗って乱れるのだぞ、フフフ」 「なんか変な意味に聞こえるんだけど」 「じゃあ、俺様はセナの上に乗って乱す」 「お前らな・・・」  明らかに違う方向で会話しだした二人を放置して、セナはどんどん先に歩き出した。そうこうしているうちに、港町に到着する。  港町オルフェーヴルは、ほぼ人間が住む交易が盛んな町だ。魔族の領域とは思えないほど活気に満ちていた。  近付いてきた漁師の格好をした男性が、アディに話しかけた。 「魔王陛下、今年の漁猟の収穫量は昨年より増しております。これも魔王陛下が新造して下さった船のおかげですな。より遠くまで網を張れます」 「ふむ、では後ほど城へ良い水揚げ食材を届けよ。セナに食させる」 「かしこまりました」 「アディは、船も作るんだ」 「より良い生活は、利便的な道具で繁栄する時もあるからだ」 「なるほど」  アディは魔族ではあるが、元々半分は人間だ。魔王になる前は人間の地で暮らしていた事もあるようなので、人間の文明に助力を惜しまないようだ。 「大きすぎる力は、逆に文明を滅ぼすがな」 「え?」 「魔王様、リドレイ様。今夜はうちの店に寄っていかれます?そちらの可愛らしい男の子もご一緒に」  豊満なボディの美人のお姉さん数人が、アディに目配せしていた。明らかにそちら系の誘いなので、セナは赤くなる。  アディはセナの肩を抱き寄せてやんわりと答える。 「俺には可愛い伴侶のセナが居る。残念だが今後の誘いは受けられぬ」 「まぁ、魔王様の伴侶様」 「うふふ、どうりで魔王様の匂いがすると思いましたわ」 「待て待て待て、セナはまだ魔王のものじゃない!いずれは俺様のものになるぞ」 「え?リドレイ様とも?」 「きゃ〜修羅場よ〜♡三つ巴かしら」 「・・・もう勝手に騒いでてくれ」  アディとリドレイが言い争っている間に、セナは一人で散策しようと歩き出した。  ウロウロとしているうちに実は道に迷い、戻ろうとするが路地は複雑でキョロキョロとする。すると曲がり角で誰かにぶつかって、セナは尻餅をつく。 「うあっ」 「す、すまない!大丈夫か」  差し出された手に顔を上げると、王子様が居た。ウェーヴのかかる金髪が右側だけ顎先まで伸ばし後は後ろでポニーテールのように軽く縛っている。目はスカイブルーで澄んでいて、肌は白いが端正な男前で身長もありそうだ。  王子様の男らしい手を掴んで身を起こす。 「あの、すみません。怪我は?」 「君はおかしな子だな。君の方こそ怪我はないかな」 「あ、はい。・・・あの、俺はこれで」 「待ってくれ!実はこの町に来るのは初めてで、よければ案内してくれないかな?」 「あの、俺も初めてで・・・」 「では、共に町を見て回ろう。私は、ユーライア。可愛いらしいお方、是非ともご一緒を」 「うっ・・・」  また変な人が出てきたなと、セナはいつまでも手を握る男前な王子様を見つめた。

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