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番外編 勇者と魔王

《番外編は各攻めの一人称視点でお送りします。R18はぼちぼち入れていけたらと》  俺はアーディフィエル、魔王だ。それ以上でも以下でもない。別に好きで魔王になったわけではないが、くだらない争いがめんどくさいから終わらせたかっただけだ。  しかし、魔王になって良かった事はある。愛しの勇者セナと出会えた事だ。綺麗な黒髪と妖艶な黒い瞳の最愛の我が勇者よ・・・相変わらずレベルは1のままだが。  アディという愛称も、セナにだけ許しているそれだけ特別な存在と言う事だ。そんな愛しの勇者セナは今日も魔王である俺を倒すために、魔王の間で特訓をしていた。  今日の稽古相手は、焼き鳥か。焼き鳥と言っても、本物の焼き鳥ではない。セナの守護精霊で、普段は黄色い鳥の姿をしている。まったくセナに四六時中ベタベタとまとわりつく不愉快な鳥め、いつか必ずや焼き鳥にしてくれよう。 「ピヨッ!!」 「アディ、ぴよ太は焼き鳥にさせないからな」 「なぜわかった」 「なんとなくだよ」  セナに以心伝心したのだろうか、思考が読み取られた。さすが俺の勇者だ。 「あと、お前の勇者じゃないからな。俺は俺のもの」 「・・・・」  さすが俺の勇者だ。 「お前と星空の元結ばれた仲だというのに、なかなか釣れないな。博愛主義か、そこがお前のいいところだがあまり痺れを切らせると俺も強硬手段でいくぞ」 「な、なんだよ・・・」 「そうだな、鎖に繋いで・・・」 「・・・ゴクリ」 「狼の姿で一日中ベロベロと舐め回してやろう」 「・・・・可愛いな、アディ」  可愛いのはお前だ、セナよ。そんなわけないだろう。鎖に繋がずともお前を中も外も俺で穢して、嫌だと言っても失神するまで愛してやろう。  興奮したきた。 「・・・俺、今日から一人で寝ようかな」 「却下に決まっているだろう」 「なんでだよ!俺だって一人部屋欲しいよ。夫婦だって今どき、一人部屋持ってるんだぜ」 「一人部屋を与えたら、お前を犯し放題になるだろう。あいつらが」 「その思想から離れてくれ」 「一人部屋以外なら許可しよう」 「えー、じゃあ魔王の座」 「・・・」  セナは度胸もありそこがまたそそるが、少しばかり頭が弱い。残念なところも愛しいが。 「レベル1の魔王になるのか?」 「一人部屋以外なら何でもいいんだろう?」 「確かに先程の発言に嘘偽りはないが、いささか無謀すぎはしないか?」 「今から魔王倒すんだから、大丈夫だ」  セナは親指を立てて、いきりたったドヤ顔をしている。どうせならドロドロに甘く溶けた顔にしてやろう。 「ほう、それは楽しみだ」  指をクイクイとさせてセナを呼ぶと、なんの警戒心もなく目の前に来た。勇者の自覚がないぞ、セナ。そのまま引き寄せて、膝に座らせてやる。 「どうだ?魔王の椅子の座り心地は」 「硬いんだけど」 「ではもっと柔らかい所へ座らせてやろう」 「わっ!おいいきなり立つなよ、しかも姫抱きは恥ずかしいからやめてくれ!」 「それは聞き入れない願いだな」  俺の腕の中で可愛くさえずる勇者と、このまま日々を過ごせたらと今はただただ願うばかりだ。

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