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そんな瑠輝のシェルター暮らしも残り僅か。 国の決まりで、シェルターに保護されたオメガは高校卒業と同時に、否が応でも外の世界に出なければならない決まりとなっている。 その為、高校入学時にシェルター内にあるオメガのみの高校へ進学するか。それとも、将来を見据えてベータ等もいる外部の高校へ進学し、あらかじめ外の世界を知っておくのか。 瑠輝は後者を選び、ベータと僅かのオメガしかいない授業料が安い国立の高校を選択した。 結果、オメガに対する世間の風当たりが思った以上に強いことを知ったのと、莉宇という生まれて初めの大切な親友を得ることができたのであったのだが。 社会へ出て行くにあたって、唯一瑠輝は心揺れることがあった。元々、同年代の男性より身体が小さいオメガの瑠輝は、もうすぐ十八になろうとしているが、未だに発情期を迎えていなかったのだ。 シェルターで暮らすオメガは、大抵その中で初めての発情期を迎え、その期間をどう過ごせば良いのか。三ヵ月に一度、身を持って体験し学んでいく。 だが、このままいくと瑠輝は発情しないまま社会へ出て行く可能性が高い。 発情が重く、発情抑制剤を内服してもそれを抑えられない者。発情抑制剤を内服すれば、そこまで発情に苦しむことなく暮らせる者。 一度発情期を迎えたオメガのほとんどは、その特異体質から社会でまともに働くのは難しく、厭われてしまう最下位の存在である。 だからこそ、自身の発情がどの程度のものか。知ると知らないとでは、社会に出た時の身の置き場も変わる。 しかし、現在の瑠輝はそのどれにも当てはまることはなく宙ぶらりんのままだ。正直、いつ何時発情期が訪れるのか分からず、日々恐怖だけが募る。 子を成すつもりなんてないから、発情期なんていらないのに。 そう思っていたが、オメガとして生まれてきた以上遅かれ早かれ間違いなく発情期は必ず訪れる。 外の高校へ通っていた瑠輝は、いつか起こるであろう不測の事態に備え、項を保護するためのネックプロテクターを装着し、まだ一度も内服したことのない発情抑制剤を持ち歩いていた。 項はオメガの弱点だ。万が一、ヒート中にアルファからそこを噛まれてしまったら最後。そのアルファと(つがい)契約を結ぶことになってしまう。 一度項を噛まれたオメガは、それ以後番相手であるアルファにしかフェロモンを放出しない。度々、心無い事件に遭うオメガの中には不特定多数に放出してしまうフェロモンが嫌で、誰かれ構わずわざと項を噛ませる者もいるという。 だが、性格の不一致や行きずりで番となってしまった等の理由から、番を解消できるのはアルファだけで、オメガはもうそのアルファでしか発情を止めることができず、その一生を遂げるまで生き地獄だというのだ。 その事実は、瑠輝のオメガとして生まれてきたことをより一層憎む原因となっていた。

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