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051.ダブルシークレット

「あの、終電なくなっちゃって……。」 「へ?」  三回目のデートも終わろうかという頃合い、眉を寄せた彼女がそう言った。 「明日、オフですよね? よかったら、ホ、ホテル……行きません、か?」 「――!!」  女性専用マッチングアプリ、「リリーラブ」。そこで初めて出会った女性である彼女は黒髪ロングの清楚系だ。花に例えるなら鈴蘭のような愛らしい女の子。ちょうど、声も鈴を鳴らすようだし。色白で、俯きがちで、背も小さくて……。  だからこそ俺は驚いた。こんな可愛い子が自分から夜のお誘いなんてしちゃうもんなのか!? 「ええーっと……、」  戸惑うのだって当たり前だ。俺には大きな隠し事があった。  俺は実は……、――女装癖があるだけの男なのだ!  当然、レズビアンな女性たちの暗黙のルールみたいなのは何ひとつとしてわからない。  ホテルって、つまり、ヤろ? ってことで……合ってるよな? え? 女の子同士のカップルだと普通にお泊まり会みたいな意味になっちゃったりするの? え? え? 「私じゃ、だめ、ですか……?」  腕に抱きつかれて、思いがけず柔らかな感触を味わってしまう。あーっ、これ絶対「当ててんのよ」ってヤツだ! あーっ、はいっ、そうですか……!  ――じゃー男の俺とレズの女の子が一緒に寝ることになっちゃうのか!?!?  かといってほったらかすわけにもいかず。だって終電ないって言うし! 夜景を見に田舎まで来ちゃったから、この辺だと泊まれそうなとこもラブホくらいしかないのだ!!  暗くすれば、だ……だいじょー、ぶ、……かな!? 「わ、わかったよ。あたしでいいなら……。」 「ホントですか……!? わぁ、……嬉しい……っ!」  かっ……かわいいぃー……ッ!!  って俺、腑抜けてる場合かよッ!?  腕を組みながら二人で向かうのは煌々と輝くラブホテル。足並みを揃えて進む間、彼女はいつもよりハイテンポであれこれいろいろ話しかけてきた。きっと緊張してるんだろう。俺も緊張で生返事ばっかりだ。  ああ、主導権だけは手放すまい。しっかりしろ、俺。風呂だけは別々で、あわよくば先に入ろう。バスローブで隠せばたぶんバレない。それから、彼女の風呂上がりまでに電気は消すんだ。そして胸がないのに気付かれないよう、着衣エロに持ち込むんだ……!  というより、酒でも飲ませて寝かせちゃったほうがいい? いやだめだ、この子お酒強いんだった。うわあああ、むしろ飲んじゃだめなのは俺の方だーッ! 「この部屋でいいですか?」 「う、うん。」 「じゃあ行きましょうか!」 「は、はい。」  主導権なんててんで握れないまま、俺と彼女は、ついにホテルへチェックインしてしまった。  この時、どうして俺に予想なんてできただろう。  唇ぷるぷる、おててやわやわ、おっぱいでかめの清楚系女子の彼女が、まさか、――俺と同じ男であっただなんて。 創作BLワンライ・ワンドロ @BL_ONEhour お題:隠し事

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