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050.パンツの日

 汗かいたから銭湯寄っていこうよ! ……なんて言い出してきたあの野郎を、いますぐこの手で殴りに行きたい。  が、残念ながらというかなんというか、今の俺には機動性なんてものは一切なかった。肝心要の装備が一つ足りない、ただそれだけの理由で。 「あ、遅かったね。」  ロビーのベンチで悠長に瓶牛乳を飲んでいたコイツは、悪戯っ子のにやにや笑いのまま俺へ振り向いた。こ、こ、この野郎ぅーッ!! 「牛乳飲む? コーヒー牛乳でもフルーツ牛乳でも奢るよ?」 「ふっ、ふっ、ふッざけんなっ!! 早く、返せッ!!」 「返せ? え、なんのこと?」  しらばっくれてるのがありありとわかる胡散臭い笑顔! しかし俺とて変態にはなりたくない。ロビーには若い女の子たちだっているんだし、何を返して欲しいかなんて大声で言えたものでは……ッ。 「もしかして、コレのこと?」  と言ってコイツは無造作に懐へ手を突っ込む。膨らんだポケットからは、アーッ! アーッ! 俺のパンツの生地がチラッと!! 「やめろぉーッ!!」  人様の前でパンツ晒されるとか公開処刑かよっ!!  咄嗟に叫んだせいで周りの人たちの視線が痛かったけどパンツ出されるよりはマシだった。そんなことになったらもうここ来れないじゃんっ! 「え、でも返して欲しいんだよね?」  俺の恥ずかしさをしっかり理解している顔だった。ぷぷぷって笑いながら尋ねてきやがって、コンチクショー! 「人前で出していいもんじゃないだろっ!?」 「じゃあどうやって返せばいいのかなぁ。困ったなぁ。」  とても困って見えない様子がホントに腹立って仕方がない。コイツいったいどうしたらいい? 「だいたいどうしてそんなモン勝手に持ってったんだよ……!!」 「そりゃ欲しいからに決まってる。」 「ハァ!?」  男が? 男物のパンツを? 欲しいだと? しかも使用済みだぞ!? 「持って帰っていいなら大事にするよ。なんならついでにフロントで新品買ってきてあげるけど、どうする?」  大事にって、ホントになんなのォ? 「ね、どうする?」 「どうするって……っ!!」  ズボン一枚で落ち着かない俺は、……えーっと! どうすればいいんだよォーッ!!

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