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第12話 悪夢のそのまた前の悪夢(3)*R18
そこからは、ただ地獄のような日々が続いている。
「あ゛っ」
あの時取り出された黒い棒を固定具で無理矢理取り付けられ、それがずっと中で震えている。兄さんがいない間はその状態で放置され、帰ってきたら鞭で身体中を打たれる。飽きたら暫く躰を殴り、蹴り、それにも飽きると酷く乱暴に犯される。気絶しても何かしらの方法で起こされる。もう何日外に出ていないか分からない。ただ一日のうちに一度ある食事と排泄だけで日を刻んでいる。学校にもまったく通えていない。別にあそこに執着があったわけでも愛着があったわけでもないが、ここよりよっぽどましだ。
「あは、痛い?ねえ痛い優月?」
黒く光る鞭を片手に、心地善さげに兄さんが訪ねてくる。
「あたりまえでしょ...」
身体中が痛い。苦しい。いっそ殺されたほうがよっぽど楽だ。
「まあそうだよね。でも、いいでしょ?中のそれ、気持ちいよね。だって、優月、突くたびにイクもんね。」
そう言って兄さんが固定具の上から棒を弾く。
「あっ」
瞬間、躰の奥から刺激がせりあがってくる。
「~~~~~~っ」
悲鳴にもならない声が部屋を満たす。
「お前、俺とのセックスではただ痛いだけのはずなのに、あいつ...樹だっけ?樹に犯されて気持ちよくなって、とっくに開発されてるんだもんね?」
グリグリと動かされて刺激に脚が震える。
「この淫乱。今度友達を家に呼んでみようか。きっと可愛がってもらえるよ、お前。」
何を考えているのか想像はつく。
(...最悪。)
気持ち悪い。気持ち悪い。気持ち悪い。気持ち悪い。気持ち悪い。
「嫌、だよ。兄さん。」
兄さんだから、我慢できる。兄さんだから、耐えられる。兄さんだから、享受できる。兄さんだから、俺は、受け入れられる。全て、全て、兄さんだから。
「は?」
低い、低い声が、脳髄に響く。
「優月、兄さんは口答えする権利をお前に与えた覚えはないよ。」
バチン、と、鞭が皮膚に叩きつけられる。
「い゛っ」
痛みの上に重なる痛みに、声が自然と喘ぐ。
「優月、言うことはちゃんと、聞いてね。兄さんだって、優月がイイコなら乱暴にはしないよ。」
そう言って兄さんが俺の頭を撫でる。...温かい。どれだけ壊れてしまっても、この体温だけは変化しないでいる。僅かに残っている、いつかの兄さんの残滓。
「はい、兄さん...」
姿形は同じなのに、違う。確かに同じ存在なのに。
(痛い...)
今更、あの頃を思い出す、なんて。思い出しても戻ってきたりしないのに。
(痛いよ、兄さん。)
こんなにされても、まだ兄さんを憎めない。殺せない。嫌えない。
(痛い...)
それどころか、好きでさえある。愛を持ってしまている。
「じゃ、もっかいシよっか。」
その夜、何度も気絶して起きられなくなるまで行為を繰り返された。
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